ゲームが完成に近づくと、次は「どう売り出すか」を決める工程に入ります。価格、地域ごとの価格、発売日、発売当日の動き、そして早期アクセスで出すかどうか。どれも開発の最後にまとめて決めるものではなく、ストアページや宣伝と並行して、発売の数か月前から少しずつ固めていくものです。この工程が全体のどこにあるかは「ゲーム開発の全工程マップ」で確認できます。
本記事では、個人〜少人数のインディーゲームを Steam で発売する場合を例に解説します。Steam の規則と数値は2026年10月時点の公式ドキュメント(Steamworks ドキュメント)で確認したもので、変わることがあります。手続きの前には公式ページを確かめてください。
夕宮たいだふぁ……みんな〜、今日は「ゲームを発売する日」までの話だよぉ。ボタンひとつで発売……なんだけど、そのボタンを押すまでが長いんだぁ。順番に見ていこ〜。
発売までの流れと逆算
ひとことで:発売は当日の作業ではなく、Steam の審査や待ち期間から逆算して積み上げる工程です。
ここでいう「発売(リリース)」は、ゲームを買える・遊べる状態にすることです。大きな会社では販売の部署やゲーム機メーカーの認証、パッケージの製造が絡み、発売日は早くから固まります。個人で Steam に出すなら手続きが少ない代わりに、価格の入力から発売のボタンまでを自分で行います。主な「待ち」は次のとおりです。
| 条件 | 内容(2026年10月時点) |
|---|---|
| Steam Direct の登録料 | Steam に作品を出すための登録。1本ごとに $100。支払いから発売まで最低21日(2026年9月に公式ドキュメントが30日から書き換わった。Steam Direct の紹介ページは30日のまま) |
| 近日登場ページ | 発売前のストアページ。最低2週間、近日登場(Coming Soon)として公開しておく |
| ストアページの審査 | 通常3〜5営業日。公開したい日の7営業日前までの申請を推奨 |
| ビルドの審査 | ビルド(配布するゲームのファイル一式)の審査。通常3〜5営業日。7営業日前の申請を推奨。ストアページを審査に出した後でないと申請できない |
| 価格の審査 | 入力や変更のたびに Valve が確認する。通常1〜2営業日 |
| 発売日の変更 | 予定日の2週間前を過ぎると変更できない |


最短でも、発売日の2週間前までに近日登場を公開し、その7営業日前にはストアページの審査を申請しておく計算です。ウィッシュリスト(買いたい人が作品を登録しておく一覧)は近日登場ページから集め始められるので、実際はもっと早く公開します。審査は差し戻されることもあります。筆者の「つみこめ!イカサマ魔法麻雀」も、初回のストアページの審査は差し戻しでした(作品名の欄の入れ方と、AI 利用の開示の書き方の2点)。時間のかかる素材(カプセル画像・スクリーンショット・予告編)は、Steam での作品の登録(アプリの発行)より前から並行して作り始めています。審査の中身は「Steamストアページの作り方」、ビルドの仕上げは「マスターアップとは」で解説しています。
価格の決め方
ひとことで:類似作の価格とボリュームを基準に決め、地域ごとの価格・返金・割引の規則とあわせて設計します。
基準は類似作とボリューム
まず自分の作品に近いゲームをいくつか(例えば5〜10本)選び、価格・発売年・レビュー数・遊べる時間を表にまとめます。規模の近い作品は Steam のタグ(ジャンルや特徴の分類)で探せます。価格は作った手間ではなく「買う人が何と比べるか」で受け止められるので、類似作より高くするなら、ボリュームや遊びの独自性など納得できる理由をストアページで示します。
返金の規則との関係
Steam では、購入から14日以内かつプレイ時間2時間未満なら、理由を問わず返金を申請できます(予約購入は発売日から14日)。公式の説明では、返金は購入の不安を取り除く仕組みで、無料でゲームを手に入れる方法ではないとされています。開発者から見ると、最初の2時間で「買ってよかった」と思ってもらえるかが返金の多さに表れます。1周が短い作品ほど序盤の満足度と価格の釣り合いを慎重に考え、遊べる時間の見込みはストアページに正直に書きます(水増しは逆効果です)。
地域別価格
Steam の価格は37通貨・4つの地域グループで設定し、価格を入力していない通貨の地域(日本円が未入力なら日本)からは購入できません。2026年3月27日の更新で、米ドルの価格を各通貨に換算する方法が3つになりました。
| 換算の方法 | 考え方 |
|---|---|
| 為替レートのみ | その時点の為替で換算する |
| 購買力のみ | 各地域の購買力(物価や所得の水準)で換算する |
| 多変数 | 購買力・同種の娯楽の価格・為替を合わせて考える。以前の推奨価格に最も近い |
換算表は「2026年1月時点の公開データで作成」と表示され、従うかどうかは自由です(従わなくてもストアでの露出に影響しないと公式は説明)。基本の価格には「多変数換算で $0.99 相当」以上という下限があります(Pricing)。
ローンチ割引
ローンチ割引は発売と同時に始める割引で、2026年10月時点の規則は次のとおりです(Discounting)。
- 割引率は10%〜40%(公式の推奨は10〜15%程度)
- 期間は7〜14日(太平洋時間の10時に終了)
- 発売前にしか設定できない(設定場所はアプリの管理画面の発売日の欄の下)
発売後30日は通常の割引ができないので、付けるかどうかは発売前に決めきります。
30日ルールと四季のセール
Steam の割引には、30日の間隔を空ける規則が3つあります(2023年1月1日に28日から30日へ延びました)。
| 規則 | 内容 | 例外 |
|---|---|---|
| 発売から30日 | 発売(早期アクセスの開始と正式発売の両方)から30日間は割引できない | ローンチ割引 |
| 値上げから30日 | どれか1通貨でも値上げすると、30日間は割引できない | なし |
| 割引の間隔 | 割引の終了から次の割引の開始まで30日空ける | 四季の大型セール |
四季の大型セール(春・夏・秋・冬)は3つ目の規則の例外ですが、1つ目と2つ目の期間中は参加できず、参加できるのは開始日の30日以上前に発売した作品です(2026年秋のセールは10月1日〜8日でした)。


また公式は、発売から30日は価格を変えないよう求めています(発売時の大きな入力ミスは相談可)。値上げは30日間の割引の禁止につながるので、「安く出して、あとで上げる」はやりにくい仕組みです。
売上の分配と登録料の回収
Steam の取り分は一般に30%で、1作品の売上が1,000万ドルを超えた部分は25%、5,000万ドルを超えた部分は20%に下がります(2018年の公式告知)。支払いは毎月、売上があった月の翌月30日までに行われます。
Steam Direct の登録料 $100 は返金されませんが、その作品の売上(Steam ストアとゲーム内課金の調整後の総売上)が $1,000 以上になった後の支払いで回収されます。筆者の麻雀ゲームは、パブリッシャー(販売を代わりに担う会社)を付けず、サークル名義で自主販売しています。違いは「インディーゲームの資金とパブリッシャー」で解説しています。



30日ルールが3つもあるの……むずかしいねぇ。でも「価格と割引は発売の前に決めきる」って覚えておけば、だいたい大丈夫なんだぁ。
発売日の選び方
ひとことで:準備の締め切りから逆算し、Steam のイベントや自分の予定と重ならない平日を選び、表示は段階的に絞ります。
Steam の規則
Steamworks の管理画面では、具体的な予定日を必ず設定します(利用者には見えません)。ストアの表示は「日付」「年月(August 2023 など)」「四半期(Q3 2023 など)」「年」「日付なし(Coming Soon)」の5通りから選べ、発売までは自由に切り替えられます(Release Dates)。「未定(To be announced)」はなく、一覧では選んだ期間の最後の日(年月なら月末)として並びます。初めは「年」や「四半期」で出し、確実になってから日付に絞ると無理がありません。
予定日の2週間前を過ぎると、発売日は変更できません。その頃から「近日発売」の一覧に出始めるためで、延期するならそれより前に判断します。週末の発売は、Steam のスタッフが対応できないため公式は勧めていません。
重ならないようにするもの
| 重なり | 考え方 |
|---|---|
| 四季の大型セール | 発売から30日以内に始まるセールには参加できない。Chris Zukowski 氏は2023年の記事で、セール中は新作向けの一覧が消え、新作の露出が大きく減ると指摘している(2026年6月のトップページ刷新より前の分析) |
| Steam Next Fest | 年3回の体験版のイベント。参加するなら、その回の終了前には発売できない。2024年6月は Next Fest と夏のセールの間の1週間に約480本が発売された(Zukowski 氏の分析) |
| 大型タイトル | 同じジャンルの大作と重なると注目が集まりにくい、とよく言われる。Zukowski 氏は同じ記事で、Steam の規模は大きく大作を避ける必要はない、という立場 |
| 自分の予定 | 発売後の1〜2週間は、不具合の対応に張り付ける日程にする |



ぁぅ……発売日って、2週間前を過ぎたらもう動かせないんだって。延期するかもって思ったら、早めに決めようねぇ。
発売前チェックリスト
ひとことで:ストア・ビルド・告知の3つに分けて2週間前までに確かめ、当日の直前にもう一度見直します。
ストアと審査
| 項目 | 確かめること |
|---|---|
| ストアページ | 承認され、近日登場として2週間以上公開されている |
| ビルド | 審査が済んでいる。承認後は再審査なしで差し替えられるが、差し替えたら同じ確認をやり直す |
| 価格 | 販売したいすべての通貨で入力し、審査が済んでいる |
| ローンチ割引 | 付けるなら設定済み(発売後は設定できない) |
| トレーラー | アップロードと変換が済んでいる(変換中は発売できない) |
| 対応言語 | ストアに出す言語が、ゲーム内で実際に選べる(対応の有無はストアページではなくゲーム内の言語設定で決まる) |
| 内容の申告 | Content Survey(内容の申告。年齢区分のもとになる内容と、AI 生成コンテンツの開示)が実際の内容と一致している |
トレーラーは公式の中で必須か任意かの書き方が食い違いますが、実質必須と考えます。内容の申告と AI の開示は「ゲーム開発の権利と規約」で扱います。
ビルドと機能
| 項目 | 確かめること |
|---|---|
| 配信するビルド | 製品版が default ブランチ(一般の購入者に届く版)に設定されている(設定は管理画面で手動) |
| 版番号 | タイトル画面などに出ていて、不具合報告で版を特定できる |
| クラウド保存 | 同期するファイルの指定があり、別の PC で続きから遊べる。「開発者のみ」のままになっていない |
| 実績 | Steamworks の設定を公開(Publish)し、製品版で解除できる |
| クラッシュ時のログ | 保存場所が決まり、版番号と動作環境が残る。送り方を案内できる |
| 配布物の中身 | 開発用のファイルがない。steam_appid.txt(開発中に Steam 連携を試すファイル)も、公式は配布物に入れないよう案内している |
クラウド保存(Steam Cloud)は、セーブを Steam のサーバーに置いて別の PC でも続きから遊べるようにする機能です。コード不要の Auto-Cloud(管理画面で保存場所とファイルのパターンを指定する方式)で、筆者のゲームは同期するファイルの指定が0件なのに、ストアの機能欄に「Steam クラウド」と出ていたことがあります。実際には何も同期されません。最初の指定を足すと「開発者のみ」が自動でオンになる点にも注意します。
告知とサポート
| 項目 | 確かめること |
|---|---|
| 問い合わせ窓口 | 不具合報告の受け先(メール・Discord など)と書き方の案内がある |
| 発売の告知 | SNS の投稿と、Steam のイベント(お知らせ)の下書きがある。イベントにはカバー画像(800×450px)が要る |
| 報道・配信者・キュレーター | 送り先と時期を決めた。Curator Connect なら、発売前でもキュレーター(おすすめを発信する個人や団体)にレビュー用のコピーを送れる(100キュレーター・各5本まで) |
| ウィッシュリストの通知 | 発売時に登録者へ自動で届く。同じ作品の通知には2週間のクールダウンがあるので、体験版の通知と発売日を2週間以上離す |
告知は「インディーゲームの宣伝」、体験版の通知は「体験版(デモ)の作り方」で解説しています。



クラウド保存、表示だけ見て「できてる」って思うの、絶対ダメだよ! 2台のパソコンで続きから遊べるか、ちゃんと試してねぇ。
発売ボタンと当日の動き
ひとことで:承認されても自動では発売されず、管理画面の「Release App」を自分で押した瞬間が発売時刻になります。
Release App ボタン
承認と2週間の近日登場の条件がそろっても、作品は勝手には発売されません。発売したい瞬間に、Steamworks の作品の管理ページ上部にある緑の「Release App」ボタンを自分で押します。押すと、次のことが一度に行われます。
- ストアのパッケージ(購入できる商品)を公開する
- ローンチ割引を開始する(設定している場合)
- ゲームを遊べる状態にし、発売済みにする
- 発売時刻を「NOW(押した時刻)」に設定する
発売(と近日登場の公開)には「Publish app changes to Steam」と「Manage pricing and discounts」の2つの権限が要ります。チームなら、押す人とその権限を前もって確かめます。押す時刻は、押した後の数時間は不具合に対応できる時間にします。Steam の割引の切り替えは太平洋時間で動くもの(ローンチ割引の終了は10時)が多いので、日本から出すなら時差も確かめます。


当日の動き
| タイミング | やること |
|---|---|
| 押す前 | default ブランチのビルド・価格・ローンチ割引・ストアの文章を最終確認し、対応する人がそろっているか確かめる |
| 押した直後 | ログインしていない状態などでストアページを開き、価格と購入ボタンを確かめる。告知(SNS・Steam のイベント・Discord など)を出す |
| 当日中 | レビュー・掲示板・問い合わせ・クラッシュの報告を見る。既知の不具合の一覧を掲示板の上に固定する |
| 翌日以降 | 不具合を重さの順に並べ、急ぎのものから直す。売上の数字は日ごとに更新されるので、慌てずに推移を見る |
発売日に合わせて配る更新は「デイワンパッチ」と呼ばれます。パッケージ版は製造のため早めに完成版を固めるので、その後の修正を発売日に配るものです。製造の待ちがない Steam では、ビルドを承認後も差し替えられます(「マスターアップとは」参照)。発売直後の修正の出し方は「発売後のゲーム運用」で解説しています。



ほよ? 承認されても勝手には発売されないんだぁ。押した時刻がそのまま発売時刻なんだねぇ。
早期アクセスという選択肢
ひとことで:遊べる状態のゲームを開発途中のまま売り、プレイヤーの声を聞きながら完成させる出し方です。
早期アクセス(Early Access)は、遊べるアルファ版・ベータ版の段階で販売し、開発を続けて正式版を目指す仕組みです。2026年10月時点の公式ドキュメントで決められている主な点は次のとおりです。
| 決まり | 内容 |
|---|---|
| 遊べる状態で出す | 遊べるゲームがないうちは出さない。最低限、ゲームプレイを見せるトレーラーが要る |
| 将来を約束しない | 将来の機能や予定について具体的な約束をしない。今の状態を見て買ってもらう |
| 目的の制限 | クラウドファンディングや予約販売の代わりにしない。開発が終わった作品では使わない |
| 戻せない | 近日登場に戻せず、発売済みの作品を早期アクセスに戻すこともできない(試すだけなら無料のテスト配布の仕組み Steam Playtest を使う) |
| 質問票 | なぜ早期アクセスか・期間の見込み・正式版との違い・今の状態・価格・コミュニティとの関わり方に答える |
| 価格 | 早期アクセス中は常時割引ができない。他のストアより遅く、または高く Steam で売らない |
| 更新 | 12か月以上更新がないと、ストアページに注意書きが付く |
正式版へ移るときは、ウィッシュリストの登録者に改めてメールが届き、正式版としての発売時の露出も受けられます。早期アクセスが向くのは、遊びの核ができていて、更新を続ける時間と体力がある場合です。物語が中心のノベルゲームのように途中までだと価値が伝わりにくい作品では、体験版で序盤を見せてから正式版で出す方が合うこともあります。
AIゲーム開発での発売準備
ひとことで:確認の自動化と文章の量産は AI に任せ、価格・発売日・公開のボタンは人が決めて押します。
AI に任せやすいこと
確かめる項目も文章の量も多い発売準備で、AI エージェントが特に役に立つのは次の作業です。
- チェックリストを作り、機械で確かめられる項目を検査にする:本記事のチェックリストにプロジェクト固有の項目を足してもらい、スクリプトで確かめられるもの(配布フォルダと「入れてよいファイルの一覧」の照合、版番号の食い違い、ストアで出す言語の未翻訳の数など)は自動の検査にします
- ストア文・告知文・パッチノートの多言語化:一次訳を AI が作り、別の AI か人が校正する分業が現実的です。筆者の麻雀ゲームでは、英語は LLM(大規模言語モデル)の一次訳を Codex が校正し、2,625行と32ファイルを見て379行を直しました
- 逆算の予定表:発売予定日から審査の申請日などを営業日で数え、日本時間と太平洋時間を並べた表にします
筆者が同じエンジンから派生させたカードゲームでは、提出用ビルドの確認で、開発用のスクリーンショット117枚(94MB)が配布物に入っていたのが見つかりました。デバッグ用の「全部見える視点」が配布版のメニューに出ていたこともあります。どれも人の目では見落としやすく、ファイルの一覧と設定を機械で照合すれば見つかる事故です。麻雀ゲームでは、Claude Code が配布用のビルドを作り、必要な3ファイルだけを複製してハッシュ(SHA256。ファイルの中身から計算する指紋のような値)で照合してから、筆者がアップロードしています。
人が決めること・確かめること
AI が出せるのは、選択肢とその根拠までです。次のことは人が決めます。
- 価格・地域別価格の方針・ローンチ割引の率:類似作の調査は任せられますが、「いくらで売るか」は作品の位置づけそのものです
- 発売日と押す時刻:発売後に自分が対応できるかは、自分にしかわかりません
- 押すボタン:Release App、default ブランチへの設定、ストアやイベントの公開、SNS への投稿
- 最後の通し確認:製品版を自分で起動し、買った人と同じ手順で遊べるかを確かめます
筆者の運用では、ビルドの審査を通過しても、Release App を AI に押させることはありません。押した瞬間に発売されるからです。公開に関わる操作はすべて筆者が行い、Claude Code は設計・実装・テスト・確認・文書、Codex は画像の初稿・翻訳の校正・試し遊び、と役割を分けています。
重心はどう動くか
AI を使うと、チェックリストや翻訳、告知文の下書きにかかる手間は大きく減ります。その分重くなるのが、「何を出すか」「いつ押すか」の判断と、最終確認の責任です。作業が速く進むほど判断の回数も増えるので、発売前の数週間は、AI の成果物を確かめる時間を先に予定へ入れておきます。
落とし穴
- 公開系の操作を AI に任せない:発売・価格の変更・ストアの公開・SNS への投稿は取り消しにくい操作です。Claude Code の自動承認モード(auto mode)は本番環境への公開(production deploy)を既定で止め、ブラウザを操作する Claude in Chrome も公開や購入の前に利用者へ確認する設計です。ただし公式ドキュメントは、会話で伝えた「公開しないで」は会話の要約で失われることがあるので、確実に止めるなら設定の禁止ルール(deny)に書くよう案内しています(「Claude Code パーミッションと安全設定ガイド」「Codexの権限と安全設定」参照)
- 直前の「ついでの修正」:AI に頼めば変更はすぐ終わるので、発売直前に「ついでにここも」と頼みたくなります。Steam のビルドは承認後も再審査なしで差し替えられるため、止める仕組みがありません。数日前からは致命的な不具合の修正だけにすると決め、入れたら自動テストと配布物の照合をやり直します
- AI の知識が古い:割引の間隔が28日だった頃の規則や、2024年8月より前のカプセル画像のサイズ、2026年6月の変更より前の「ウィッシュリスト7,000件で注目の近日登場に載る」という目安を、AI がそのまま答えることがあります。規則と数値は公式ドキュメントで日付つきで確かめます
- ストア文の決まりを外れる:短い説明に「発売中」のような時期の言葉は入れられません。翻訳で「Now available!」などを足してしまう可能性があるので、ストアの決まりも一緒に渡します
依頼文の例
機械で確かめられる項目の検査は、次のように頼みます。書き方の基本は「Claude Code プロンプト設計」「Codexプロンプト設計」で解説しています。
Goal: 発売前チェックのうち、機械で確かめられる項目を1本のスクリプトで検査する
Context: 配布フォルダは build/release/。入れてよいファイルの一覧は docs/release_files.txt。
版番号はゲームの設定ファイルと CHANGELOG.md の2か所にある。ストアで出す言語は docs/languages.txt
Done when: 一覧に無いファイル・版番号の食い違い・未翻訳の文字列を見つけたら、場所を表示して失敗で終わる。
わざと不要なファイルを1つ混ぜ、失敗することを確かめた
Constraints: ビルドのアップロードと Steamworks の操作はしない(筆者が行う)
よくある失敗と対処
ひとことで:多くは「待ち時間」「一度しか設定できないもの」「公開の操作」の見落としです。
| 失敗 | 起きること | 対処 |
|---|---|---|
| 審査を1回で通る前提で予定を組む | 差し戻されて発売日に間に合わない | 7営業日前の申請に加え、差し戻し1回分の余裕を見る |
| ローンチ割引の設定を忘れる | 発売後は設定できず、30日間は割引もできない | 価格を入力する日に割引も決めて設定する |
| 発売直後に値上げする | 30日間、四季のセールも含めて割引できない | 価格は発売前に決めきり、30日は変えない |
| 週末や休暇の直前に発売する | 自分も Steam のスタッフも対応できない | 自分が張り付ける平日に押す |
| 予約公開・自動化の設定を誤る | 意図しないものが公開される | 日時を明示して指定し、公開の操作は人が行う |
予約公開の誤りは、筆者も経験しています。ブラウザ版の麻雀ゲームを3日おきに1本ずつ公開する予定で予約を組んだところ、設定のミスで8本が約4分間公開されてしまい、取り下げました。それ以来、予約は日時を必ず明示して指定しています。
チェックリスト
ひとことで:発売までに確かめる9つの項目です。
- [ ] 発売予定日から、審査の申請日と発売日を動かせなくなる日(2週間前)を逆算した
- [ ] 類似作の価格・ボリュームを表にして価格を決め、すべての販売通貨に入力した
- [ ] ローンチ割引を決めて発売前に設定し、30日ルールと四季のセールの時期を確かめた
- [ ] 四季のセール・Next Fest・自分の予定と重ならない平日を選んだ
- [ ] ストアページとビルドが承認され、近日登場として2週間以上公開されている
- [ ] クラウド保存・実績・対応言語を、実際の動作で確かめた
- [ ] 告知文・Steam のイベント・問い合わせ窓口を用意した
- [ ] Release App を押す人・権限・時刻と、押した後の対応を決めた
- [ ] 公開に関わる操作は AI に任せず、人が行う決まりにした
次に読む記事
ひとことで:発売の前後の工程を深める記事です。
- 発売後のゲーム運用:不具合対応・アップデート・レビュー・セール
- Steamストアページの作り方:近日登場ページと審査
- インディーゲームの宣伝:ウィッシュリストを集める方法
- 体験版(デモ)の作り方:体験版と Steam Next Fest
- マスターアップとは:提出するビルドの仕上げ
- ゲーム開発の全工程マップ:工程の全体像



ふぁ……価格、発売日、チェックリスト、そしてボタン。押すのは自分、ってところだけは忘れないでねぇ。続きは発売後の運用の記事で話すよぉ。









