キャラのポーズの描き方|感情から体の向きを決めて、見せ場を作る

キャラのポーズの描き方|感情から体の向きを決めて、見せ場を作る
夕宮たいだ

ふぁ……みんな〜、今日は「キャラのポーズ」の話だよぉ。顔はうまく描けたのに、全身にすると気持ちが伝わらない……ってこと、あるよねぇ。

漫画で感情を伝えるのは、顔の表情だけではありません。読者は肩・胸・腰・足の向きからも、キャラが何を感じ、次に何をしようとしているかを読み取ります。表情より先に「体の向き」を決めると、全身が一つの意図でまとまり、棒立ちから抜け出せます。

この記事では、感情を「近づく・離れる・広がる・縮む・固まる」という行動の向きに置き換え、その向きを目→顔→胸→腰→足の順に配って、最後にカメラ・余白・コマへつなげる手順を解説します。向きを揃えると感情が強くなり、ずらすと照れやためらいのような複雑な感情になる、という使い分けや、正面・斜め・横・後ろの選び方、顔を隠しても伝わるかを確かめる練習も紹介します。

連載「漫画の画面設計」の4本目です。コマの中のカメラの高さや距離の選び方は「漫画のネームの演出」で扱っています。

目次

感情は全身の向きで読まれる

ひとことで:読者は顔だけでなく体からも感情を読むので、顔と体の向きをいっしょに設計します。

ポーズで感情を伝えるとき、顔の表情だけに頼るのは危険です。心理学の研究では、人が体の姿勢からも感情を読み取ることが報告されています。描く人に関係の深い研究を2つ紹介します。

顔と体が食い違うと、顔の読みが体に引っぱられる

Meeren らの研究(PNAS 誌、2005年)では、怒りと恐怖の顔と体の写真を組み合わせた合成画像を見せ、顔の表情を判断してもらいました。顔と体の感情が食い違う画像では、顔の表情の判断がしにくくなり、答えが体の表す感情の方へ引っぱられました(論文)。

写真を使った実験で、漫画の絵そのものを調べたものではありません。それでも、「顔は怒っているのに、体はくつろいでいる」絵は読者を迷わせうる、と考えておくのが安全です。顔をうまく描くだけでは、感情が伝わるとは限りません。

夕宮たいだ

ほよ? 顔と体がちぐはぐだと、顔の読み方まで体に引っぱられちゃうんだぁ。顔だけがんばっても足りないこと、あるんだねぇ。

同じ感情でも、ポーズはいくつもある

Lopez らの研究(Frontiers in Psychology 誌、2017年)では、頭と首を消した体だけの写真を大学生26人に見せ、喜び・悲しみ・恐怖・怒り・嫌悪の5つから感情を選んでもらいました。意図した感情と答えが一致した割合は、全体で79%でした。どの感情でも、形の違う複数のポーズが見分けられています(論文)。ただし、一部には見分けにくいポーズもありました。

一方で、両手の拳を突き上げた怒りのポーズは、ほかの怒りのポーズより見分けにくく、喜びと取り違えられることもありました(約2割)。論文では、誇りを表す体の表現に似ているためではないか、と述べられています。俳優2人が演じたポーズの写真を5択で答える実験で、こちらも漫画の絵を調べたものではありません。

2つの研究から、ポーズを描く人が持ち帰れることは3つです。

  • 体だけでも、感情はかなり伝わる。顔に頼りきらなくてよい
  • 一つの感情に、決まったポーズが一つあるわけではない。「怒り=このポーズ」と一対一で覚えない
  • 腕の形のような部分の形だけでは、別の感情と混ざることがある。全身の向きと、感情が向かう相手で読ませる

感情を「行動の向き」に置き換える

そこでこの記事では、感情を表情の名前ではなく、「誰に・何に向かって、どう動こうとしているか」という行動の向きで考えます。Lopez らの論文でも、姿勢は感情に結びついた行動の傾向を伝えるものとされ、恐怖の姿勢は対象を避けて身を守る反応、怒りの姿勢は対象へ向かって伸び、体を大きくする反応と説明されています。

この記事では、行動の向きを次の5つに分けます。感情の例は候補で、同じ感情でも場面によって別の向きになります。

行動の向き体に出ること感情の例(候補)
近づく胸・腰・足が対象へ向き、重心が前に出る詰め寄る怒り、駆け寄る喜び、好意
離れる腰と足が対象から外れ、重心が後ろへ逃げる恐怖、嫌悪、気まずさ
広がる胸が上がり、肘や足の幅が開く大きな喜び、誇り、威嚇
縮む肩が内へ入り、頭が下がり、体の幅が狭くなる悲しみ、恥ずかしさ、身を守る恐怖
固まる動きが途中で止まり、肩が上がり、手先が硬くなる驚き、緊張、不安

同じ「怒り」でも、敵に詰め寄るなら「近づく」、言い返せずにこらえるなら「固まる」、自分を責めるなら「縮む」になります。感情の名前に加えて、「その瞬間、何をしようとしている感情か」まで決めるのが出発点です。

感情から体の向きを決める手順

ひとことで:感情を行動の向きにしてから、視線→顔→胸→腰→足の順に向きを配り、最後にカメラ・余白・コマへつなげます。

行動の向きが決まったら、それを体の部位に配ります。考える順番は次のとおりです。

順番決めること自分への質問
1感情と、その対象この感情は誰に・何に向かっている?
2行動の向き近づく? 離れる? 広がる? 縮む? 固まる?
3視線今、何を見ている?
4顔の向き誰を気にしている?
5胸と肩相手を正面から受ける? 背ける?
6腰次に、どこへ動こうとしている?
7足と重心次の一歩はどちら? どちらの足に体重が乗っている?
8カメラ・余白・コマ読者に、どこから、どう見せる?

これは、人の体がいつもこの順に動くという体の法則ではありません。漫画の演出を設計するための手順です。

感情から体の向きを決める手順。感情、行動の向き、視線、顔、胸、腰、足、カメラ・余白・コマの順に矢印でつながる流れ
図1:感情を行動の向きに置き換え、目から足へ順に配って、最後に画面へつなげる

部位ごとの役割

部位ごとに担当を決めておくと、向きを配るときに迷いません。

部位担当すること読者が読み取る問い
目(視線)一瞬の注意今、何を見ている?
顔意識誰を気にしている?
胸と肩相手への態度開いている? 守っている? 正面から受けている?
腰と足次の行動進む? 逃げる? 留まる?

目は「注意」、顔は「意識」、胸は「相手への態度」、腰と足は「次の行動」を描きます。

体の上のほう(目と顔)ほど一瞬の気持ちを、下のほう(腰と足)ほど本当に次にすることを担当する、と考えると配りやすくなります。目と顔が相手を見ていても、腰と足が出口を向いていれば、読者は「この人はもう帰りたいのだ」と読みます。顔と体の向きのずれで、言葉にしない本音を描けるわけです。

視線の先にあるものへ、顔・胸・腰・足がどこまでついていくか。それで感情の強さと迷いを描き分けるのが、次の「揃える・ずらす」です。

揃えると強く、ずらすと複雑に

ひとことで:向きを全部揃えると感情はまっすぐ強くなり、どこかをずらすと迷いや照れのような複雑な感情になります。

揃える:迷いのない感情

敵に向かって突進する怒りなら、視線・顔・胸・腰・足を全部、相手の方へ向けます。体重は前の足に乗せます。さらに集中線や、次のコマの相手まで同じ方向へ流すと、読者の目も同じ向きに走り、読みやすく強い見せ場になります(効果線の使い方は「効果線とトーンの使い方」)。

揃えるのが向いているのは、喜び・怒り・決意のように、気持ちに迷いのない瞬間です。ギャグの場面で、全身を同じ向きに振り切って勢いで笑わせるのも、揃える使い方の一つです。

ずらす:ためらい・照れ・未練

部位の向きをずらすと、一枚の中に二つの気持ちを置けます。たとえば「帰ろうとしているのに、最後に一言だけ言いたい」場面なら、足と腰は出口へ、胸は半身、顔と視線は相手へ向けます。体は帰りたがり、顔は残りたがっている、というためらいになります。

体の向きを揃えたポーズとずらしたポーズの比較。揃えると全部の矢印が相手へ向き、ずらすと足と腰は出口、胸は半身、顔と視線は相手へ向く
図2:揃えると感情はまっすぐ強く、ずらすと「帰りたいけれど、一言だけ言いたい」ためらいになる

照れも、ずらすと描きやすい感情です。「好きだから見たい(近づく)」と「恥ずかしいから逃げたい(離れる)」の二つの向きに分けて、部位に振り分けます。

部位揃える(まっすぐな好意)ずらす(照れ)
視線相手を見る一瞬だけ見る、横目で見る
顔相手へ向ける外へ逃がす
胸と肩相手へ開く半身にして胸を守る
腰相手へ進む出口の側に残す
足相手へ踏み出す片足だけ逃げる向きへ

これは「照れならこの姿勢」という決まりではなく、二つの気持ちをどの部位に担当させるかの一例です。未練なら、足は帰り道のまま顔だけ振り返る。恐怖なら、目と顔は危険を見続けたまま、胸・腰・足が逃げ始める。同じ考え方で、いろいろな感情を組み立てられます。

夕宮たいだ

ふぁ……顔はそっぽを向いてるのに、目だけちらっと戻ってくる……。向きをちょっとずらすだけで照れになるの、おもしろいねぇ。

ずらすときは、まず1か所から始めます。全部の部位をばらばらにすると、どれが本音の向きなのかが読めず、何の感情か分からなくなります。

正面・斜め・横・後ろの使い分け

ひとことで:キャラの向きは描きやすさではなく、読者と感情の距離で選びます。

同じポーズでも、正面から見せるか、斜めや後ろから見せるかで、読者が受け取る圧と距離が変わります。

向き得意な演出弱点
正面対峙、宣言、覚悟、読者への直撃左右対称の棒立ちになりやすい
斜め前(3/4)感情と動きを同時に見せる、ひねり、迷い何を向いているかが曖昧になりやすい
真横二人の関係、進む方向、対立の軸奥行きが弱くなりやすい
斜め後ろ隠しごと、去る・振り返る、ためらい表情の情報が減る
後ろ感情を隠す、孤独、読者を同じ方向へ向かせる顔に頼った表現ができない

3/4(スリークォーター)は、正面と真横の間の、斜め前から見た向きです。顔・胸・腰を別々の角度で見せられるので、「本音と行動がずれている」ポーズを一枚で伝えやすく、使い道の広い向きです。

正面の圧の強さには、参考になる実験があります。山口創による研究(実験社会心理学研究、1997年)では、目を隠した二人組で座る位置を変えて気分を調べ、相手の正面、斜め、横の順に緊張や興奮が高かったと報告されています(論文)。実際に人を座らせた実験で、漫画の絵を調べたものではありませんが、真正面の対峙を「斜めより圧の強い見せ方」として使うときの目安になります。

後ろ姿は「体で見せる」構図

顔が見えない後ろ姿は、感情を消す構図ではありません。頭を消した体だけの写真でも感情がかなり見分けられた、という先の研究のとおり、肩の落ち方、背中の丸さ、足の向き、まわりの余白で感情は語れます。後ろ姿は、体の表現を試す構図と考えます。

たとえば告白の場面なら、向きの選び方で読後感が変わります。

案体の向き読後感の例
正面の対峙二人の胸を向き合わせる決断、正面突破
3/4告白する側だけが向き、相手は半身緊張、関係の非対称
背中越し告白する側の背中と、相手の表情だけが見える読者が告白する側に重なる
二人とも後ろ姿同じ方向を向いて立ち、片方が振り返る親密さ、余韻

感情ごとのポーズの考え方

ひとことで:感情ごとの「基本の向き」を出発点にして、対象と強さで形を決めます(決まった型ではありません)。

次の表は、行動の向きを手がかりにした組み立て方の候補です。「この感情なら必ずこのポーズ」という対応表ではありません。同じ感情でも、誰に向いているか、どれくらい強いかで形は変わります。

スクロールできます
感情基本の向き正面なら斜め(3/4)なら後ろ・斜め後ろなら
喜び広がる・近づく胸を開き、腕と足の間隔を広げる一歩前へ出て胸を相手へ、腰にひねり目的地へ進みながら顔だけ振り返る
怒り近づく・広がる胸と肩を相手へ向け、重心を前へ前の足に体重、胸と腰にねじれ肩越しににらむ、去ろうとする足との対立
悲しみ縮む・離れる肩を内へ、頭を下げ、幅を狭く背中を丸め、胸を対象から外す丸い肩と小さなシルエット、広い余白
驚き固まる・離れる胸を引き、肩を上げ、足を止める顔だけ先に刺激へ向け、胴は遅らせる体は先へ進み、顔だけ急に振り返る
照れ近づく+離れる顔は外すが、胸は逃がしきらない顔・胸・腰を別々の向きにする背を向けつつ横目、顔だけ振り返る
恐怖離れる・縮む体の幅を小さくし、手で身を守る顔は脅威へ、胸・腰・足は逃げる向き逃げる体と、肩越しに脅威を見る顔
緊張・不安固まる肩を上げ、左右をわずかに非対称に足を前後にずらし、胸を固め、視線で探る背中を固め、頭だけ対象へ向ける

喜び:「うれしい顔」より先に、シルエットを広げます。胸を少し上げ、肩を外へ開き、肘と胴の間にすき間を作ります。静かな喜びなら手足は大きく開かず、胸と顔だけを対象へ向けます。大きな喜びなら、一歩踏み出す、跳ぶといった、体重が移る動きを加えます。

注意したいのは、両手の拳を上げるだけで済ませることです。先の研究のとおり、拳を突き上げた怒りのポーズは喜びと取り違えられることがありました。腕の形だけでは感情は決まりません。喜びなら上と外へ開き、胸と顔も喜びの対象へ向ける、というように全身の関係で読ませます。

夕宮たいだ

両手の拳を上げるだけ、はダメだよぉ。怒りにも喜びにも見えちゃうから、その拳が誰に向いてるかまで描いてねぇ。

怒り:外へ向かう怒りは「相手との距離を詰める」と考えます。あごだけを前に出すのではなく、胸・ひざ・体重を支える足まで相手の方向へ送ります。斜めから描くなら、前の足に体重を乗せ、後ろの足のかかとを浮かせると、次の瞬間に動き出す体になります。

こらえる怒りは逆に、動きません。拳は腰や体の近くで握り、胸を閉じ、顔と視線だけを相手に置きます。「動きたいのに動けない」ほうが強く見える場面もあります。自分への怒りなら、対象は自分なので、体を縮める、頭を抱えるといった選び方もできます。Lopez らの研究で使われたポーズにも、怒りを内にためるものと外へ出すものの両方がありました。

悲しみ:顔を伏せるだけでなく、体が占める面積を減らします。頭を下げ、肩を内へ入れ、胸を少し丸め、肘を胴へ近づけ、足の幅も狭くします。後ろ姿なら顔を描かなくても、肩の落ち方と余白で孤立を示せます。

ただし、悲しみは静かなものだけではありません。Lopez らの研究でも、悲しみのポーズによって気持ちの高ぶりの評価に差があり、体を片側へ向けた悲しみのポーズは恐怖と取り違えられることがありました。泣き崩れる悲しみなら低く縮み、取り乱す悲しみなら腕や上体を大きく使う、というように、感情の名前に強さまで足して決めます。

驚き:全身を同時にのけぞらせるより、部位の反応にずれを作ると漫画らしくなります。最初に目と顔が刺激へ向き、次に肩が上がり、胸が引き、最後に腰と足が後ろへ下がる、という時間差を一枚のひねりに詰めます。

たとえば右側から急に声をかけられたなら、視線と顔は右、胸は正面のまま、腰と足は左へ歩き続けている形にします。全身が右を向いてしまうと「もう振り向いた後」になり、突然さが減ります。ギャグの場面なら、あえて全身を一度にのけぞらせて大きく振り切るのも手です。

照れ:照れは、向きのずれがいちばん武器になる感情です。好意があるなら完全には背を向けず、目だけ戻る、胸が少し残る、足は逃げる、のように近づく向きと離れる向きを混ぜます。頬を赤くして顔を横へ向けるだけだと、顔を隠したとたんに照れが消えます。顔を塗りつぶしても照れが残るかを、シルエットで確かめます。

恐怖:外の脅威への恐怖は、怒りと向きが反対です。強い恐怖では、目と顔は危険を見続けているのに、胸・腰・足はもう逃げ始めている、というねじれが生まれます。ホラーで廊下の奥の気配に気づいた瞬間なら、顔は奥を見たまま、腰と足は出口へ向けます。反対向きの二つの矢印が、一枚の絵に「見る」と「逃げる」を同時に置きます。

怒りと恐怖の体の向きを比べた棒人間。怒りは視線から足まで全部が相手へ向き、恐怖は視線と顔だけが相手へ、胸・腰・足は逃げる向き
図3:怒りは全身が相手へ向かう。恐怖は目と顔だけが相手に残り、胸・腰・足は逃げ始める

緊張・不安:大きな身ぶりを足すより、動きが途中で止められている感じを出します。肩をわずかに上げる、肘を胴に寄せる、手は強く握らず指先だけを硬くする、足を左右対称にせず前後にずらす、といった小さな変化で描きます。

ポーズを描く順番

ひとことで:対象を点で置き、向きを1本の矢印にしてから、足と腰→胸と肩→背骨の流れ→顔→腕と手の順に描きます。

向きを考える順番(目から足へ)と、線を引く順番は逆になります。気持ちは目から追うと決めやすく、絵は体重を支える足と腰から組むと安定するからです。描くときは、感情に関係なく次の順で進めます。

順番描くこと自分への質問
1感情の対象を点で置く誰に・何に感情が向いている?
2行動の向きを1本の矢印にする行く? 逃げる? 固まる?
3支持足と腰を置く次の一歩はどこ?
4胸と肩の線を置く対象を受ける? 背ける?
5背骨の流れを通す頭から足まで、一本の流れで読める?
6顔と視線を描く体と揃える? わざと逆らわせる?
7腕と手を描く感情を強めている? 邪魔していない?
8シルエットで確かめる顔なしでも、感情の大きな向きが分かる?
9カメラとコマを決める読者の目を、次にどこへ送る?

支持足は、体重を支えている足です。背骨の流れは、頭から支持足までを通る体の動きの線で、アクションラインとも呼ばれます。

CLIP STUDIO TIPS の講座「ポーズの描き方」(Cheishiru)では、背骨の動きに沿った曲線(アクションライン)を引き、肩の線と腰の線を反対に傾けるコントラポストを入れてから手足を足す、という順が紹介されています。体の軸と肩・腰を、腕や手より先に決める点は、この記事の順番と同じです。講座には、腰が傾いているときは高い側の脚が体重を支える脚になる、という説明もあります。肩の線と腰の線が平行なままだと棒立ちに見えやすいので、迷ったら反対に傾けてみます。

ポーズ資料の見方

ポーズ資料は、輪郭を写すためではなく、向きを抜き出すために見ます。資料の人物に、次の線だけを重ねて想像します。

  • 視線の向きと、顔の中心線
  • 肩の線と、胸の向き
  • 腰の線
  • 頭から支持足までの背骨の流れ
  • 体重が乗っている足と、つま先の向き(次に進む方向)

筋肉や服を描く前に、この線だけを棒人間や箱人間で決めると、どの資料からも「感情→体の向き」の練習ができます。

人体のポーズ資料サイトには、POSEMANIACS などがあります。資料を見て描いた自分の絵と、サイトの素材(画像や画面)そのものを転載することは、扱いが違います。たとえば POSEMANIACS の利用規約は、素材そのものの複製や転載を禁じる一方、素材を見て描いた絵の利用はその禁止から外しています。使う前に、各サイトの規約を確かめてください。

カメラ・余白・コマとつなげる

ひとことで:ポーズで決めた向きを、カメラ・余白・視線の流れ・前後のコマへ延ばすと、見せ場になります。

ポーズが決まったら、「どこから見せるか」で感情をもう一度演出します。カメラの高さと距離の選び方は「漫画のネームの演出」で詳しく扱うので、ここではポーズとつながる要点だけをまとめます。

  • 正面:対峙・宣言・読者への直撃に強い。胸と肩が画面と平行に近いほど、逃げ場のない感じが出る
  • 斜め:顔・胸・腰の角度の違いが見えるので、本音と行動のずれを一枚で見せられる
  • あおり(下から見上げる):手前の足・拳・胸が大きく写り、威圧や力の演出と相性がよい
  • 俯瞰(上から見下ろす):小さな人物と広いまわりを同時に見せられ、余白と組むと孤立が出る。ただし「上から=弱い」と決めつけず、場面に合わせて選ぶ

余白:余白は、感情の向きの延長です。視線の先に大きな余白を取ると、「相手までの距離」「届かない」「待っている」が出ます。逆に、視線の先をすぐコマの枠でふさぐと、閉じこめられた感じや拒まれた感じになります。

視線のリレー:一般に、漫画では顔とフキダシに読者の目が集まりやすいと言われます。キャラの視線や伸ばした手で、前のフキダシ→怒った目→突き出した手→相手→次のフキダシ、のように読者の目をリレーさせます(フキダシの置き方は「漫画のフキダシの描き方」)。日本の漫画はページを右上から左下へ読むので、キャラの向きや動きをこの流れと同じにすると速さや突破に、逆らわせると抵抗やためらいに見えます。決まりではなく演出の使い分けとして、どちらにするかを意識して選びます。

前後のコマ:見せ場は、一コマだけでなく前後のテンポで生まれます。

段階コマの大きさ役割
予兆小〜中手・足・横顔などを部分だけ見せる
ため小一瞬止める。視線だけが動く
見せ場大全身か強い寄りで、向きを確定させる
余韻中〜小後ろ姿・空間・受け止める側を見せる

ふだんのコマが全部正面のバストアップなら、見せ場の正面の寄りも弱く見えます。直前まで横顔→後ろ姿→手元と情報を絞り、決断の瞬間だけ顔と胸を正面へ返すと、体の向きの変化そのものが物語の変化になります。コマの大小の付け方は「漫画のコマ割りの基本」で扱っています。

ネームガチャで試す

ひとことで:ネームガチャの人物のポーズとカメラの向きを変えて、揃える・ずらすの違いや、顔なしでも読めるかをすぐ確かめられます。

ネームガチャは、漫画のコマ割りに人物のアタリ(下描き用の人形)を自動で置く、ブラウザ用のツールです。無料・登録不要で使えます。2〜3人の会話の場面を、コマの形と演出のトーン(日常・緊張・対立・驚き・悲しみなど10種類)に合わせて撮り分けます。人物のポーズは、立ち・考える・話す身ぶり・感情・動き・低い姿勢の46種類から、演出に合わせて選ばれます。

この記事の考え方は、次のように試せます。

  • 揃える・ずらすを試す:ページの人物をダブルクリックすると、ポーズの手直しが開きます。関節の丸をドラッグして回せるので、足と腰の向きを先に決め、胸、顔の順に回して、全部揃えたポーズと1か所ずらしたポーズを作り比べます
  • 見せる向きを選ぶ:コマを押すと、解説ウィンドウでそのコマのカメラ(向き・高さ・レンズなど)を変えられます。そのコマを「カメラだけ」で引き直すと、同じポーズのまま別の撮り方を見比べられます。気に入った撮り方は「固定」できます
  • 顔なしテスト:描き方を「シルエット」に変えると、カメラと演技はそのままで、人物が形だけで描かれます。顔なしでも感情の向きが読めるかを確かめられます
  • 自分のポーズを増やす:作ったポーズは「マイポーズ」としてブラウザの中に保存され、「ガチャでも使う」をオンにすると、ガチャでも選ばれます
ネームガチャのポーズの手直しの画面。キャラの関節に丸い印が付き、右に関節や手の形を選ぶ欄が並んでいる
図4:関節の丸をドラッグして回し、部位ごとに向きを変えてポーズを作る

できたページは、書き出しの「クリスタ用(PSD)」で、人物が1人ずつのレイヤーに分かれた PSD として保存でき、下描きの下敷きに使えます。いまも機能を足している開発中のツールなので、画面や結果が変わることがあります。

使い方は「ネームガチャの説明ページ」にまとめています。ツールは「ネームガチャを開く」から使えます。

練習課題

ひとことで:顔を描かない練習から始めて、向きだけで感情を伝える力をつけます。

時間や枚数は、この記事での練習の目安です(決まりではありません)。

顔なしの棒人間:1体30〜60秒ほどで、棒人間を20体描きます。お題は「前へ行きたい」「逃げたい」「近づきたいけど恥ずかしい」「怖いけど見なければいけない」の4つです。顔・服・手の指は描かず、頭の向き・肩の線・腰の線・足だけで描き分けます。

同じ感情を3方向で:怒り・悲しみ・喜びを、正面・斜め(3/4)・後ろの3方向でそれぞれ描きます。後ろ姿で描けないと感じた感情ほど、顔に頼っています。

一つの感情を3通りに:同じ怒りを「殴りかかる怒り」「こらえる怒り」「自分への怒り」の3通りで描きます。一つの感情を一つの型に固定しないための練習です。

1か所だけずらす:視線・胸・腰・足の4つをカードのように考えて、1枚だけ逆の向きにします。照れ・後悔・うそ・未練のような、混ざった感情を描く基礎になります。

  • 視線・胸・腰は相手、足だけ出口:話は続けているけれど、もう帰りたい
  • 視線だけ床、胸・腰・足は相手:向き合う覚悟はあるのに、目を合わせられない

3秒テスト:描いた絵をほかの人に3秒ほど見せて、次のように聞きます。

  • 誰に気持ちが向いている?
  • 近づきたい? 離れたい?
  • 次にどちらへ動きそう?
  • 最初にどこを見た?

「怒りに見えた?」のように感情の名前で聞くと、答えを誘導してしまいます。同じ形でも別の感情に読まれることがあるので、感情の名前が当たったかより、意図した行動の向きが伝わったかを確かめます。

夕宮たいだ

あはは、やったねぇ。顔を塗りつぶしても「逃げたいんでしょ」って当ててもらえたよぉ。向きだけで、ちゃんと伝わるんだねぇ。

よくある失敗と直し方

ひとことで:多くは「顔だけで感情を描く」「形だけを選んで向きを考えない」ことから起きます。

よくある失敗なぜ弱いか直し方
顔だけに感情があり、体は直立している顔と体の情報が分かれ、読みが揺れる顔を隠して、棒人間から描き直す
強く見せたいのに、硬く見える向きを揃えただけで、ひねりと重心がない前の足に体重を乗せ、肩と腰の線を反対に傾ける
ずらしすぎて、何の感情か分からない部位がばらばらで、本音の向きが読めないずらすのは1か所から。本音の向きを先に決める
どのコマも正面関係や進む方向が消える斜め(3/4)や斜め後ろも試す
怒り=拳を上げる喜びや勝利と混ざることがある拳が誰へ・どこへ向くかを見せる
どちらの足に体重があるか分からない浮いて見え、力が伝わらない支持足を先に決め、腰の線を合わせる
全員が大げさなポーズ見せ場との差が消えるふだんのコマは抑え、変化の瞬間だけ大きくする
悲しい=下を向く、だけ静かな悲しみ1種類に固まる対象・強さ・何をしたいかを決める

チェックリスト

ひとことで:描いたポーズを、感情→対象→向き→重心→画面の順に確かめる10項目です。

  • [ ] 「誰に・何に向いた感情か」を一言で言える
  • [ ] 行動の向き(近づく・離れる・広がる・縮む・固まる)を説明できる
  • [ ] どこを見ているかが一瞬で分かる
  • [ ] 顔の向きが視線と揃っているか、ずれているかが意図どおりになっている
  • [ ] 胸と肩が、開く・閉じる・相手へ向く理由がある
  • [ ] 腰と足が、次に動く方向と合っている(または、わざとずらしている)
  • [ ] どちらの足に体重が乗っているかが分かる
  • [ ] 頭から支持足まで、一本の流れで読める
  • [ ] 顔を塗りつぶしても、攻める・退く・固まるくらいは分かる
  • [ ] 見せ場のコマだけ、向き・大きさ・角度に変化がある
夕宮たいだ

ふぁ……感情を向きに変えて、目から足まで配る。揃えるか、ずらすかを決める。まずは顔なしの棒人間から、気楽に描いてみてねぇ。

次に読む記事

連載「漫画の画面設計」の5本です。

  1. 漫画のコマ割りの基本とコツ|読む順番・大ゴマ・間(テンポ)の設計
  2. 漫画のフキダシの描き方|形の意味と、読む順番を崩さない置き方
  3. 漫画のネームの演出|カメラの高さ・距離と「基準と落差」で見せ場を作る
  4. キャラのポーズの描き方|感情から体の向きを決めて、見せ場を作る(この記事)
  5. 効果線とトーンの使い方|線の種類が伝える感情と、使いすぎない基準

ツールの一覧は「自作ツール」にまとめています。

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