ゲーム企画は、ゲーム開発の最初の工程です。何が面白いゲームなのか(コンセプト)、遊ぶ人が何を繰り返すのか(コアループ)、誰に向けるのか(ターゲット)、類似作と何が違うのか(フック)を言葉にし、作れる規模かを見積もって、作るかどうかを決めます。この連載では工程を「企画」「プリプロダクション」「プロダクション」「仕上げ」「発売と運用」の段階に分けており(発売の準備は開発と並行して進めます)、企画はその最初の段階です(全体の流れは「ゲーム開発の全工程マップ」)。資料によっては、企画と試作をまとめて「プリプロダクション(作るべきか・作れるかを、企画と試作で確かめる段階)」と呼ぶこともあります。
本記事では、個人〜少人数のインディーゲームを基準に、コンセプトとコアループの決め方、ターゲットとフック、Steam での類似作の調べ方、1枚企画書の項目、規模(スコープ)の見積もり、企画を捨てる判断をまとめます。後半では、Claude Code や Codex などの AI エージェントを企画に使うとき、何を任せて何を人が決めるかを整理します。試作の進め方は「ゲームのプロトタイプとは」、仕様書の書き方は「ゲームデザインドキュメント(GDD)の書き方」で扱います。
夕宮たいだふぁ……みんな〜、今日はゲーム企画の話だよぉ。「こんなゲームを作りたい」を、人に伝わって、ちゃんと作れる形の言葉にするところからなんだぁ。一緒に整理していこ〜。
ゲーム企画とは
ひとことで:何を・誰に・なぜ作るのかを言葉にし、作るかどうかを決める工程です。
企画で決めることは、大きく次の5つです。
| 決めること | 中身 | 例(2Dパズルの場合) |
|---|---|---|
| コンセプト | 一言で言える面白さ | 重力の向きを変えて、ブロックを連鎖させるパズル |
| コアループ | 数十秒〜数分で繰り返す遊び | 盤面を見る → 重力を1回変える → ブロックが落ちて消える → 次の手を考える |
| ターゲット | 誰が・どんな場面で遊ぶか | 通勤中に1面3分ほどで遊びたい、パズル好きの社会人 |
| フック | 類似作と比べて何が違うか | ブロックを「消す」のではなく「落とす向き」を選ぶ |
| スコープ | 作れる規模か | 100面・仕掛け8種・曲5曲が、使える期間に収まるか |
ゲーム会社では一般に、企画書を会議に出して承認を受け、予算と人を付けてもらうことが企画の出口になります。個人や少人数では承認する人がいない代わりに、「この企画に、自分の時間とお金を何か月も使ってよいか」を自分で判断します。どちらの場合も、企画の出口は「作る」「作らない」「試作してから決める」のどれかを選ぶことです。
企画の時点では、面白さはまだ仮説です。仮説を確かめるのが次の工程のプロトタイプ(試作)で、試作の結果を見て企画を書き直すことも珍しくありません。企画は、試作と行き来しながら固めていくものです。
コンセプトの決め方
ひとことで:「誰が・何をして・なぜ楽しいか」を、一文で言えるまで削ります。
コンセプトは、そのゲームの面白さを一言で表したものです。よくある失敗は、「爽快な」「新感覚の」のような形容詞だけで、遊ぶ人が何をするのかが見えないことです。ゲームの遊びは、動詞(跳ぶ・撃つ・並べる・選ぶ・読む)で書くと具体的になります。
| ジャンル | 伝わりにくい一言 | 伝わる一言 |
|---|---|---|
| アクション | 爽快感のある2Dアクション | 敵の弾を跳ね返し、その弾で別の敵を倒す2Dアクション |
| ノベル | 感動できる学園ミステリー | 毎晩1人ずつ寮生が消えていく中で、誰を信じるかを選ぶノベル |
| パズル | 頭を使う新感覚パズル | 重力の向きを変えて、ブロックを連鎖させるパズル |
| カードゲーム | 戦略性の高いカードバトル | 手札を1枚だけ相手に見せてから戦う、読み合いのカードゲーム |
一文にするときは、次の3つを入れます。
- 誰が:遊ぶ人と、遊ぶ場面(例:対戦が好きな人が、友だちと)
- 何をして:中心になる動詞(例:手札を1枚見せて、出す札を選ぶ)
- なぜ楽しいか:生まれる気持ち(例:相手の裏をかいたときの気持ちよさ)
できた一文は、そのゲームを知らない人に話してみます。相手が遊んでいる様子を想像でき、自分の言葉で言い直せれば合格です。言い直した内容がずれていたら、伝えたい面白さがまだ一文に入っていません。
筆者の「つみこめ!イカサマ魔法麻雀」は、自作の小説の広報を兼ねた企画として、「魔法でイカサマする麻雀」という一言から始まりました。紹介ページのキャッチコピーは「イカサマは、宣言してから。」で、魔法を宣言して読み合うという遊びの核を、さらに短く言っています。
コアループと外側のループ
ひとことで:数十秒〜数分で繰り返す遊びの単位がコアループで、その外側により長い周期のループを重ねます。
コアループ(core loop)は、プレイヤーがゲームの中で何度も繰り返す、いちばん小さな遊びのまとまりを指すことが多い言葉です。決まった定義はありませんが、一般に「行動する → 結果が返る → 次の行動を決める」の一周を指し、数十秒〜数分で回ります。
コアループの外側には、より長い周期のループがあります。Bungie で『Halo』の設計に携わった Jaime Griesemer 氏の「『Halo』には30秒ほどの楽しさがあり、それが何度も繰り返される」という発言はよく引用されます。ただし本人は2011年のインタビューで、その30秒を違う環境・武器・乗り物・敵の組み合わせで遊ばせることまでが本意だったと説明し、3秒のループが30秒のループの中にあり、それがさらに毎回違う3分のループの中にある、という入れ子の構造を語っています(Engadget、2011年7月14日)。
ジャンルごとに入れ子のループを書き出すと、次のようになります。
| ジャンル | コアループ(数十秒〜数分) | 中くらいのループ | 外側のループ |
|---|---|---|---|
| 2Dアクション | 走る → 跳ぶ → 敵を踏む → 着地して次の足場を見る | 1ステージを通す | ワールドの解放・能力の強化 |
| パズル | 盤面を見る → 1手打つ → 消える → 次の手を考える | 1面を解く | 新しい仕掛けの登場 |
| ノベル | 読む → 気になる → 選ぶ → 結果を知る | 1章を読む | 別のルートや周回で真相に近づく |
| カードゲーム | 引く → 出す → 相手が返す → 次の手を考える | 1戦を終える | カードを集めて山札(デッキ)を組み直す |
コアループを書いたら、次の4点を確かめます。
- 一周の中に、プレイヤーの「判断」がある(ボタンを押すだけになっていない)
- 結果がすぐ返る(音・画面の変化・数字)
- 一周ごとに少しずつ状況が違う(敵の配置・手札・盤面)
- 外側のループが、コアループを繰り返す理由になっている(強化・物語・収集)
外側のループは、コアループの代わりにはなりません。一周の遊びが退屈なままでは、強化や収集の仕組みを足しても、遊び続ける理由にはなりにくいでしょう。企画の段階では、まずコアループを一周の図として書けるかどうかに集中します。





ほえ〜、3秒のループが30秒のループの中にあって、それがまた3分のループの中にあるんだぁ。マトリョーシカみたいだねぇ。
ターゲットとフック(独自性)
ひとことで:誰の、どんな時間に向けたゲームかを決め、類似作との違いを一言で言えるようにします。
ターゲット
ターゲットは、年齢や性別よりも「どんなゲームを、どんな場面で遊んでいる人か」で書くと、設計の判断に使えます。たとえば次のように書きます。
| 項目 | 書くこと | 例(読み合いのカードゲーム) |
|---|---|---|
| 今遊んでいるゲーム | 似たゲームの種類や名前 | 対人のデジタルカードゲーム、トランプの心理戦 |
| 遊ぶ場面と1回の時間 | いつ・どこで・何分 | 夜に自宅の PC で、1戦10分を数回 |
| 慣れ | 腕前、ジャンルへの慣れ | ルールを読むのは苦にならない |
| 機器と買い方 | どこで知り、どこで買うか | Steam で、おすすめやセールから |
| 求めているもの | そのゲームに期待すること | 運より読みで勝ちたい |
あわせて「誰に向けないか」も決めます。「1人でじっくり物語を楽しみたい人には向けない」と決めれば、長い1人用の物語モードを作らずに済み、規模を抑えられます。
フック
フック(hook)は、類似作と並べたときに「これは何が違うのか」を一言で言える部分です。フックには、大きく3つの作り方があります。
| 作り方 | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| 仕組みが新しい | 遊びのルールそのものが違う | 時間を巻き戻せるのは、自分以外の物だけ |
| 組み合わせが新しい | 既にあるジャンルどうしを掛け合わせる | 将棋 × 霧で見えない駒、麻雀 × 公認のイカサマ |
| 題材・見た目が新しい | 遊びはなじみ深く、包み方が違う | 深海の郵便配達、紙工作でできた世界 |
題材や見た目だけのフックは、最初に目を引いても、遊び始めると類似作との違いを感じにくくなることがあります。仕組みか組み合わせのどこか1つに、遊んで初めてわかる違いを作っておくと、フックとコアループがつながります。また、フックはスクリーンショット1枚や数秒の動画でも伝わる形にしておくと、ストアページや SNS で紹介しやすくなります(ストアページは「Steamストアページの作り方」)。
類似作の調べ方
ひとことで:Steam のタグで類似作を集め、レビューを「褒められている所」と「不満」に分けて読みます。
類似作を調べる目的は、真似をすることではなく、「このジャンルで外してはいけない所」と「まだ満たされていない不満」を知ることです。Steam で売るなら、次の順に調べます。
- ① タグを書き出す:自分のゲームに付くはずのタグ(ジャンル・遊び方・見た目・雰囲気)を5〜10個書き出します。Steam ではタグを発売前に最低5個付ける必要があり、表示やおすすめに使われるのは上位20個です(Steam Tags、2026年10月時点)
- ② タグで探す:Steam の検索では、結果の右側にあるタグの一覧で絞り込めます。Valve も同じドキュメントで、タグを決めるときは類似作に付いているタグを見るよう勧めています
- ③ 5〜10本を選んで表にする:発売日・価格・レビューの件数と評価・上位のタグ・コアループを並べます。ストアページの上部には、直近30日と全期間の2つの評価が表示されます(User Reviews)
- ④ レビューを読み分ける:Steam のレビューは、プレイ時間が記録された利用者が、おすすめするかどうかを選んで書くものです。レビュー欄では肯定的・否定的や言語で絞り込めるので(Steam の告知、2016年9月)、肯定的なレビューから「褒められている所」、否定的なレビューから「不満」を拾います
- ⑤ 上位の数本は自分で遊ぶ:最初の10分で何が起き、どこで説明が足りないと感じたかを書き留めます
調べた結果は、次のような表にまとめます(作品名は伏せた例です)。
| 類似作 | 褒められている所 | 不満 | 自作で活かすこと |
|---|---|---|---|
| 作品A(パズル) | 1面が短く、すき間の時間に遊べる | 後半は同じ仕掛けの繰り返しになる | 10面ごとに新しい仕掛けを1つ足す |
| 作品B(パズル) | 仕掛けの見た目がわかりやすい | やり直しが遅い | 1手戻しをボタン1つで |
| 作品C(パズル) | 曲と効果音が心地よい | ヒントがなく詰まる | 段階を分けたヒントを入れる |
褒められている所は、そのジャンルを遊ぶ人が当然のように期待している所で、自作でも外せません。不満は、自作のフックの種になります。ただし、不満が残っているのには理由があることも多いものです(作るのが難しい、直すと別の良さが消える)。「なぜ類似作は直していないのか」まで考えてから、フックに採用します。
レビューの件数は、売れた本数そのものではありません。類似作の数字を見るときは、件数の多さより、評価の傾向と不満の中身を重く見ます。



不満のレビューを読むのはちょっとつらいけど、次の企画の種が埋まってるんだぁ。宝探しだと思えば、気楽にいけるねぇ。
1枚企画書の項目
ひとことで:企画の要点を1枚にまとめ、人に見せて反応を確かめられる形にします。
企画書は長いほど良いわけではありません。1999年に Tim Ryan 氏が Gamasutra(現 Game Developer)に書いた設計文書の解説では、最初の「コンセプト文書」は、アイデアを出しやすくするために1〜2ページの短く簡単なものにし、導入・説明・主な特徴・ジャンル・機種などを書くとしています(The Anatomy of a Design Document, Part 1)。個人や少人数なら、まず次の項目を1枚にまとめます。
| 項目 | 書くこと | コツ |
|---|---|---|
| 仮タイトル | 作品の名前 | あとで変えてよい |
| 一言コンセプト | 誰が・何をして・なぜ楽しいか | 一文で |
| コアループ | 数十秒〜数分の繰り返し | 矢印でつないだ図にする |
| ターゲット | 今遊んでいるゲーム・遊ぶ場面・1回の時間 | 「みんな」と書かない |
| フック | 類似作との違い | 一言と、見てわかる絵 |
| 類似作 | 3〜5本と、それぞれとの違い | ストアページの URL を付ける |
| 遊ぶ時間と量 | 1回の長さ・全体の長さ・面やカードの数 | 数字で書く |
| 機種と売り方 | PC(Steam)・スマホ・ブラウザ、売り切りなど | 想定する価格帯も |
| 規模 | 人数・期間・外に頼むもの | 次の節の見積もりから |
| 画面のイメージ | 遊んでいる画面の絵 | 仮の絵や切り貼りでよい |
| 確かめたい問い | 試作で確かめること | 1〜3個 |
1枚に収まらないときは、まだ決めきれていない所があるサインです。項目を削るのではなく、「どれが核で、どれが外側か」を決め直します。日本の現場では、こうした提案と合意のための資料を「企画書」、実装のための細かい資料を「仕様書」と分けて呼ぶこともあります。仕様書の書き方は「ゲームデザインドキュメント(GDD)の書き方」で扱います。





1枚にまとめると、自分でも何が大事かがはっきりするんだよぉ。人に見せるのもすぐだし、ほら、便利でしょ?
作れる規模か(スコープ)を見積もる
ひとことで:作る物の量を数え、1つ作る時間を掛けて、使える時間に収まるかを確かめます。
スコープは「作る範囲」のことです。企画の段階で細かいスケジュールまでは要りませんが、桁が合っているかは確かめます。
- ① 作る物を数える:面・敵・キャラクター・カード・文章の量・曲・効果音・画面の数など
- ② 1つ作る時間を見積もる:できれば試作で1つ作って、実際にかかった時間を測ります
- ③ 掛け算して足し、使える時間と比べる:週に何時間使えるかも、正直に書きます
- ④ 収まらなければ削る:「必須」と「あれば良い」に分け、あれば良いものは後回しにします
例として、2Dアクションで考えます(数値はすべて説明のための例です)。
| 作る物 | 数 | 1つあたり | 合計 |
|---|---|---|---|
| ステージ | 30面 | 2日 | 60日 |
| 敵 | 15種 | 1日 | 15日 |
| ボス | 5体 | 5日 | 25日 |
| 曲 | 8曲 | 2日 | 16日 |
| 合計 | — | — | 116日 |
この合計には、調整・不具合の修正・ストアページや宣伝の作業が入っていません。週末だけ作る人なら、作業日数を暦の上の期間に直すと何倍にもなります。合計が使える時間を超えたら、面の数を減らす、敵の種類を色違いで増やす、ボスを3体にする、のように「核の体験が残る形」で削ります。
見積もりが大きく外れやすいのは、初めて作る技術(ネット対戦・物理演算・自動生成など)と、量に比例して手間が増えるもの(キャラクターの絵、文章とその翻訳)です。初めての技術は、企画の段階で小さく試してから見積もります。反対に、既にある土台を使える企画は、作る物が減り、見積もりも立てやすくなります。筆者も、麻雀ゲームの土台を複製して、派生のカードゲームを作りました。期間と節目への落とし込みは「ゲーム開発のスケジュールとマイルストーン」で扱います。



見積もり……むずかしいねぇ。初めて作るものほど読めないから、先に1つ作って測るのがいちばん確かなんだぁ。
企画を捨てる判断
ひとことで:続ける・変える・捨てるを、先に決めておいた基準で選びます。捨てた企画も記録に残します。
企画を捨てるのは失敗ではありません。量産に入ってから止めるより、企画の段階で止める方が、失うものはずっと少なく済みます。判断は次のように分けます。
| 判断 | こんなとき | 次にすること |
|---|---|---|
| 続ける | 一文で説明でき、試作で手応えがあり、削った規模が時間に収まる | 仕様書とスケジュールへ進む |
| 変える | 面白さの芽はあるが、規模が大きすぎる/違いが弱い/反応が無い | 規模を削る、フックを作り直す、届け方を変える |
| 捨てる | 一文で言えないまま/試作を直しても面白くならない/削っても規模が収まらない | わかったことを記録し、次の企画へ |
迷わないために、企画書に「こうなったらやめる・変える」を先に書いておきます。たとえば「試作を2週間続けても、初めて遊んだ5人のうち、もう1回遊びたがる人が3人に満たなければ、コアループを見直す」のような形です(数値は例です)。かけた時間を理由に続けたくなる気持ちは誰にでもあるので、基準は気持ちが入る前に決めます。
筆者の「役満連荘麻雀」は、役満ごとに作った9本を3日おきに出していく予定でしたが、反響が無かったため1ページに集約し、9種類から選んで遊べる形に変えました。作った中身は捨てずに、届け方を変えた「変える」の例です。
捨てた企画も、アイデア帳に残しておきます。コンセプトの一文、試作でわかったこと、やめた理由の3つを書いておくと、別の企画の部品として使えることがあります。
AIゲーム開発での企画
ひとことで:案を広げる・下調べ・反対意見・体裁づくりは AI に任せやすく、何が面白いか・誰に向けるか・何を捨てるかは人が決めます。
案を広げる作業は AI に任せる
企画の作業のうち、AI エージェントに任せやすいのは、量と形を作る作業です。
| 作業 | AI に頼む内容 | 人が確かめること |
|---|---|---|
| アイデアの量出し | フックの案を30個、コアループの動詞を変えた案を10個など | ターゲットに合うか、どれを試作するか |
| 類似作の下調べ | タグの候補と、類似作の比較表の下書き(ストアページの URL 付き) | 作品が実在するか、数字の出典 |
| 反対意見役 | 「遊ぶ人・売る人・作る人」の立場から弱点を挙げる | どの弱点を、どう確かめるか |
| 企画書の体裁づくり | 箇条書きのメモを1枚企画書の項目に整える | 書いた約束が実際に作れるか |
| 規模の洗い出し | コンセプトから、必要な画面・素材・機能の一覧を作る | 1つ作る時間(試作で測る) |
案を頼むときは、条件を変えて何度か頼むと幅が出ます(ターゲットを変える、使える動詞を1つに限る、題材を指定する)。
反対意見は、はっきり頼まないと出てきにくいものです。AI アシスタントには、利用者の考えに合わせた答えを返しやすい傾向(迎合)があると、Anthropic などの研究で報告されています(Towards Understanding Sycophancy in Language Models、2023年)。「この企画の良い所は?」と聞けば良い所が返ってくるので、「弱点を挙げて」と頼みます。
選ぶ・捨てるのは人
AI に決めさせないのは、次の3つです。
- 何が面白いか:AI は案の良し悪しをもっともらしく説明できますが、その遊びを遊んで面白いと感じた人ではありません。面白さは、試作を遊んだ人が決めます
- 誰に向けるか:誰のために作り、どこで売るかは、作り手の動機と責任に関わる判断です
- 何を捨てるか:案を減らす決断は、規模と期間に責任を持つ人がします
あわせて、類似作に似せすぎていないかの確認も人の仕事です(権利の考え方は「ゲーム開発の権利と規約」)。
企画の重心は「選ぶ」へ動く
GDC の2026年の調査(回答2,300人超)では、業務で生成AIを使う人は36%で、その人たちに使い道を聞くと「調査・ブレスト」が81%で最も多い結果でした(GDC 2026 State of the Game Industry)。案を出す・調べるという企画の前半は、AI で安くなった作業の代表です。
その分、企画の重心は「選ぶ・捨てる」に移ります。案が30個あれば、比べて選ぶ時間が要ります。AI に案を頼む前に、ターゲット・フックの方向・規模の上限を書いておくと、選ぶときの物差しになります。もう1つ重くなるのが、確かめる作業です。下調べは速くなっても、出典を1件ずつ開いて確かめる時間は人の側に残ります。
落とし穴
- 案が平均に寄る:生成AIの案を使って書いた短編は、1本ずつでは創造的と評価された一方、作品どうしが似通ったという実験結果があります(Doshi・Hauser、Science Advances、2024年)。「よくある案を10個挙げてから、それ以外を出して」と頼む、自分の経験や好きな題材を条件に足す、などで外します
- 存在しない作品やデータを挙げる:もっともらしい作品名や、売上・レビュー数を作ってしまうことがあります。URL を付けさせ、自分で開いて確かめた物だけを企画書に残します
- 全部採用して規模が膨らむ:良さそうな案が多いと、全部入れたくなります。「入れない物の一覧」も企画書に書きます
- 体裁が整うと、決まった気になる:AI が整えた企画書は立派に見えるので、決まっていない所まで決まったように見えます。未決の所は「未決」と書かせ、消さないようにします
依頼文の例
反対意見役を頼むときの例です(書き方は「Claude Code プロンプト設計」)。
Goal: 企画書 docs/plan.md の弱点を洗い出す
Context: Steam で売る1人開発の2Dパズル。ターゲットは通勤中に1面3分で遊ぶパズル好き
Constraints: 企画書は書き換えない。実在を確かめられない作品名や数字は出さない
Done when: 「遊ぶ人・売る人・作る人」の立場ごとに弱点を3つずつ挙げ、
それぞれに確かめ方(試作・調査)を1行で添えた表ができている
筆者の実例:能力の案を○△×で一括裁定
筆者が麻雀ゲームと同じエンジンから派生させたカードゲームでは、キャラクター20人分の能力の案を Claude に出させ、それぞれに「通常のルールからどれだけ離れているか」を○△×で付けさせました。筆者は表を見て一括で裁定し、「通常のルールから離れすぎる能力は入れない」という方針で、×の案はまとめて不採用にしました。案の数と整理は AI に任せ、選ぶ物差しは人が持つ、という分担です。



AI が挙げた「似ている作品」、確かめずに企画書に貼るのは絶対ダメだよ! 存在しない作品が混ざってることがあるんだぁ。
よくある失敗と対処
ひとことで:企画の失敗は「大きすぎる」「伝わらない」「確かめていない」の3つにまとまります。
| 失敗 | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 一文で説明できない | 要素を足しすぎている | 中心の動詞を1〜2個に絞り、残りは外側のループへ回す |
| 作り始めてから規模がどんどん増える | 作る物の量を数えずに始めた | 量を数え、必須とあれば良いに分ける |
| 面白さを確かめないまま量産に入る | 企画書の出来で満足した | 確かめたい問いを書き、試作で確かめる |
| 類似作と見分けがつかない | フックが題材だけ | 仕組みか組み合わせに、遊んでわかる違いを1つ作る |
| ターゲットが「みんな」 | 誰にでも向けようとした | 今遊んでいるゲームと遊ぶ場面で書く |
| 調べた類似作が実在しない | AI の下調べを確かめなかった | URL を開いて確かめた物だけを残す |
| 案が多すぎて決められない | 選ぶ物差しが無い | ターゲット・フック・規模の上限を先に決める |
チェックリスト
ひとことで:企画を「作る」と決める前に、次の項目を確かめます。
- [ ] コンセプトを「誰が・何をして・なぜ楽しいか」の一文で言える
- [ ] そのゲームを知らない人が、一文を自分の言葉で言い直せた
- [ ] コアループを、矢印でつないだ一周として書ける(数十秒〜数分で回る)
- [ ] 外側のループが、コアループを繰り返す理由になっている
- [ ] ターゲットを「今遊んでいるゲーム・遊ぶ場面・1回の時間」で書いた
- [ ] 類似作を5本以上調べ、褒められている所と不満を表にした
- [ ] フックを、類似作との違いとして一言で言える
- [ ] 1枚企画書にまとめ、ほかの人に見せて反応を聞いた
- [ ] 作る物の量を数え、使える時間に収まるかを見積もった
- [ ] 必須と、あれば良いを分けた
- [ ] 試作で確かめたい問いを1〜3個書いた
- [ ] 「こうなったらやめる・変える」の基準を書いた
- [ ] AI が挙げた作品名や数字は、出典を開いて確かめた
次に読む記事
ひとことで:企画が固まったら、試作で面白さを確かめ、仕様書とスケジュールに落とします。
- ゲームのプロトタイプとは:企画の「確かめたい問い」を、試作で確かめる
- ゲームデザインドキュメント(GDD)の書き方:決めたことを、作れる細かさの仕様書にする
- ゲーム開発のスケジュールとマイルストーン:見積もった規模を、期間と節目に分ける
- Codexプロンプト設計:AI への頼み方を Goal・Context・Done when で組み立てる
- ゲーム開発の全工程マップ:企画が全体のどこにあるか



ふぁ……一文のコンセプト、コアループ、類似作、規模。ここまで書けたら、企画は試作に進めそう……かなぁ。まずは一文にするところから始めてみてねぇ。









