ゲームの音は、BGM(背景音楽)・ジングル・効果音・声をまとめて指します。操作に手応えを与え、場面の空気をつくる大事な素材ですが、個人開発では後回しにされやすく、発売の直前に曲を探し回ったり、音量がばらばらのまま出したりしがちな工程です。工程の上では、プロダクション(本制作)の段階で、ほかのアセット(ゲームに入れる素材)と並行して進めます(全体の流れは「ゲーム開発の全工程マップ」)。
本記事では、サウンドリストから、BGM のループと曲の切り替え、形式・音量・同時に鳴る数の基準、入手方法(発注・購入素材・生成AI・自作)、ファイルのタグの扱いまでを、個人〜少人数の開発を基準にまとめます。アセット全般の発注と検収は「ゲームアセット制作の流れ」、権利の詳細は「ゲーム開発の権利と規約」で扱います。エンジンの仕様とサービスの規約は、2026年10月4日に公式の資料で確認したものです。
夕宮たいだふぁ……みんな〜、今日はゲームの音の話だよぉ。音って最後に足せばいいや、ってなりがちなんだけど、早めに表を作っておくとずっと楽なんだぁ。一緒に整理していこ〜。
ゲームの音づくりとは
ひとことで:場面と操作に合わせて BGM・ジングル・効果音・声を用意し、決めた基準でゲームに組み込む工程です。
役割で分けると、次のようになります。
| 種類 | 役割 | 例 | 鳴り方 |
|---|---|---|---|
| BGM | 場面の空気と気分をつくる | タイトル・フィールド・戦闘 | 数十秒〜数分の曲を繰り返す(ループ)ことが多い |
| ジングル | 出来事を短い曲で知らせる | ステージクリア・ゲームオーバー | 数秒〜十数秒。繰り返さない |
| 効果音(UI) | 操作が受け付けられたことを伝える | 決定・キャンセル・カーソル移動 | 短い音を何度も鳴らす |
| 効果音(動作) | キャラや物の動きに手応えを与える | 足音・ジャンプ・攻撃・カードを配る | 短い間隔で重なりやすい |
| 効果音(環境音) | その場所にいる感じを出す | 風・川・街のざわめき | 長めの音を繰り返す、または場所に置く |
| 声 | キャラの存在感と情報を伝える | セリフ・掛け声・ナレーション | 文章と結び付き、言語ごとに要ることもある |
背後から近づく足音や警告音のように、画面を見ていなくても状況が伝わる音は、遊びやすさに直結します。目指すのは、操作への反応が音でもすぐ返り、場面の気分を曲が支え、長く遊んでもうるさくない・聞き飽きない状態です。
進め方は、①サウンドリストを作る → ②仮の音で組み込む → ③形式・音量・同時に鳴る数の基準を決める → ④本番の音を入手する → ⑤差し替えて調整する、の順です。操作の手触りは音の有無で大きく変わるので、試作の段階から仮の効果音を鳴らしておきます。本番の音は、βROM(ベータ版=機能と素材がそろい、不具合の修正と調整が中心になる段階)までにそろえるのが目安です(基準は会社や契約で違います)。
サウンドリストを作る
ひとことで:画面の流れと操作を順にたどり、必要な音を1行ずつ書き出した一覧表です。
この表が音の仕様書になり、進み具合を管理する台帳にもなります。
- ① 画面の流れ(タイトル → メニュー → 本編 → 結果)を書き出し、場面ごとに BGM を割り当てる
- ② プレイヤーの操作と、ゲーム側の出来事(敵の出現・得点・失敗)を GDD(ゲームデザインドキュメント=仕様書)から拾い、効果音とジングルを割り当てる
- ③ 同じ音で済むもの(決定音を全画面で共通にする、など)をまとめ、優先度を付ける
| 列 | 書くこと | 例 |
|---|---|---|
| 名前 | 命名規則に沿ったファイル名 | se_ui_decide / bgm_battle_normal |
| 種類 | BGM・ジングル・効果音(UI/動作/環境音)・声 | 効果音(UI) |
| 鳴る場面・きっかけ | どの画面で、何が起きたときか | メニューで項目を決定したとき |
| 長さとループ | 秒数の目安と、繰り返すかどうか | 0.3秒・ループなし |
| 雰囲気と優先度 | 言葉で2〜3語、必須かどうか | 軽い・木の質感・必須 |
| 入手方法と状態 | 発注・購入・生成AI・自作/仮・本番・確認済み | 購入素材・仮 |
| 権利メモ | 入手元・規約の確認日・クレジットの要否 | 素材サイトA・2026-10-04 確認・表記不要 |
ファイル名は「アセット命名・バージョン規則」の考え方で付けます。リストの重心はジャンルで変わり、アクションは動作の効果音、ノベルゲームは BGM と環境音(声を入れるなら声)、パズルやカードゲームは UI と「成功・失敗」の短い音が中心になります。


BGM のループと曲の切り替え
ひとことで:曲の終わりから頭へ途切れずにつなぎ、場面の変化に合わせて、つなぎ目の目立たないところで曲を替えます。
ループの作り方
BGM はその場面にいる間ずっと鳴るので、多くの曲を繰り返し再生(ループ)します。よく使われるのは「イントロ(最初だけ鳴る部分)+ループ区間(繰り返す部分)」の形で、再生がループ終了点まで来たらループ開始点へ戻します。つなぎ目では、次の点を確かめます。
- すき間と雑音:無音や「プツッ」という音が出ない。拍の頭がそろい、波形がゼロ付近になる位置で切る
- 残響の切れ:曲の終わりの余韻が、戻った瞬間に消えると不自然に聞こえる。ループ区間の頭に余韻を重ねておく方法がある
- 聞き飽き:短すぎるループはすぐ飽きる。長く聞く場面ほど、長め・控えめな曲にする
ループの指定方法はエンジンと形式で違います。Godot 4.7 の公式ドキュメントでは、WAV はループの開始点と終了点を、Ogg Vorbis と MP3 は開始点(Loop Offset)だけを指定できます(Importing audio samples)。RPGツクールMV のコアスクリプトは、音声ファイルのタグ(曲名などを書き込む欄)にある LOOPSTART・LOOPLENGTH をループ位置として読みます(RPG Maker MV CoreScript)。ループの位置をタグで持つ仕組みもあるので、形式を変換したときにループのタグが残っているかを確かめます。
MP3 は、書き出すときに曲の頭と終わりに無音が足されるので、そのままループさせると、つなぎ目にすき間が出ることがあります(M.U.G.E.N を開発した Elecbyte の解説「BGM loop points」)。ループさせる曲は、Ogg Vorbis などで扱うのが無難です。
場面による曲の切り替え
曲の切り替え方には、大きく2つの考え方があります(Adaptive music)。
- 別の曲へ移る(水平の切り替え):通常の戦闘曲からボス戦の曲へ移る。前の曲を下げながら次の曲を上げるクロスフェードや、次の小節の頭で替える方法がある
- 層を足し引きする(垂直の切り替え):同じ曲の打楽器やベースの層を足したり抜いたりして、緊張感だけを変える。曲の流れが途切れない
Godot 4.7 の AudioStreamInteractive では、曲を替えるタイミングを「すぐ」「次の拍」「次の小節」「曲の終わり」から選べます(AudioStreamInteractive)。切り替えが複雑なら、FMOD や Wwise のような音のミドルウェア(音の再生と切り替えを組む専用の道具。利用条件は各社の公式ページで確認)を使う方法もあります。
切り替えの条件は、敏感すぎると曲が頻繁に変わり、鈍すぎると盛り上がる場面に追いつきません。「1回のプレイの何割がその曲になるか」を測ると、感覚の議論を数字で比べられます。



ほえ〜、MP3 って頭と終わりに無音が入っちゃうんだぁ。ループする曲は、つなぎ目を何周か聴いて確かめようねぇ。
形式・音量・同時に鳴る数の基準を決める
ひとことで:ファイル形式・音量の目標・同時に鳴らせる数を先に決め、すべての音をその基準にそろえます。
ファイル形式
原本の音は圧縮していない WAV などで保管し、ゲームに入れる形式は用途に合わせて別に作ります。Godot 4.7 の公式ドキュメントの勧めは次のとおりです(Importing audio samples)。
| 形式 | 向いている音 | 理由 |
|---|---|---|
| WAV | 短く、何度も鳴る効果音 | 再生が軽い(数百の同時再生でも問題ないとされる) |
| Ogg Vorbis | BGM・声・長い効果音 | 容量が小さい。再生は WAV より重い |
| MP3 | 処理能力の限られたスマホや Web の曲 | Ogg Vorbis より再生が軽い。ループのつなぎ目に注意 |
Unity 6.6 でも、圧縮形式(PCM・ADPCM・Vorbis/MP3)と読み込み方(読み込み時に展開・圧縮したまま持つ・少しずつ読みながら再生)を音ごとに選び、公式マニュアルは PCM を短い効果音に、Vorbis/MP3 を中くらいの長さの効果音と曲に勧めています(Audio Clip Import Settings reference)。
容量だけでなく、再生中に使うメモリも見ます。筆者のブラウザ版の麻雀ゲーム「役満連荘麻雀」では、Godot の Web 書き出しが曲を丸ごと展開してから鳴らすため1曲で33〜57MB を使い、古いスマートフォンでは数ゲーム遊ぶと落ちました。そこで、曲はページ側で MP3 として鳴らす形に変えています。
音量の基準(ラウドネス)
曲ごとの音量は、波形の最大値(ピーク)ではなく、人の耳の感じ方に近い「ラウドネス」でそろえます。単位は LUFS(デジタルで出せる最大の音を基準にしたラウドネスの単位)で、測り方は国際規格の ITU-R BS.1770 で決まっています。値は負の数で、0 に近いほど大きく聞こえます。
目標の値は分野で違います。放送では、欧州放送連合の EBU R 128 が番組の音量を −23 LUFS にそろえるよう推奨しています(EBU R 128-2023)。ゲームには全作品に共通する決まった値はないので、出す先やパブリッシャーの基準があればそれに従い、なければ作品ごとに目標を決めて全曲をそろえます。
測るには、DAW(音楽制作ソフト)のラウドネスメーターや、曲全体のラウドネスを表示する ffmpeg の ebur128 フィルターを使います(FFmpeg Filters Documentation)。短い効果音は、ゲーム画面で BGM と一緒に鳴らして耳で合わせます。ピークにも上限を設け、すべての音が合流する Master バスで 0 dB に届かないようにします(届くと音が割れる。Godot:Audio buses)。



LUFS……むずかしいねぇ。要は「耳で聞いた大きさ」の物差しなんだぁ。数字をそろえたら、最後は通して遊んで聴いてみよ〜。
同時に鳴る数と優先度
効果音は、重なりすぎると音が割れたり、大事な音が埋もれたりするので、上限と優先度を決めます。
- 音ごとの上限:Godot の AudioStreamPlayer では max_polyphony(既定は1)で決め、上限を超えて鳴らすと古い音から止まります(AudioStreamPlayer)
- 全体の上限:Unity では、同時に実際に鳴らす数(Max Real Voices)をプロジェクト設定で決め、超えるとフレームごとに大きい音から選ばれます(Audio)
- 優先度:操作への反応・危険の警告・声を優先し、環境音や遠くの音を先に落とす
- 繰り返しの工夫:高さや音量を少し揺らす、複数の素材から選んで鳴らすと、機械的に聞こえにくい
音量設定と音の通り道
BGM・効果音・声を別々のバス(音の通り道。Unity では Audio Mixer のグループ)に流し、それぞれに設定画面の音量スライダーをつなぎ、全体の音量(マスター)も用意します。声の間だけ BGM を少し下げる処理(ダッキング)を入れると、セリフが聞き取りやすくなります。スライダーは「0〜100%」で見せ、内部でデシベルに変換します(Godot の公式ドキュメントでは、6 dB 下げると振幅が半分になり、−60〜−80 dB のあたりで聞こえなくなる)。


音の入手方法を選ぶ
ひとことで:作曲家への発注・購入素材・生成AI・自作から、品質・費用・権利・直しやすさで選び、音ごとに使い分けます。
| 方法 | 向いているもの | 確かめること |
|---|---|---|
| 作曲家・音の作り手に発注 | 作品の顔になる曲、世界観に合わせたい効果音 | 発注書と契約(権利・修正の回数・納品形式) |
| 購入素材・フリー素材 | 汎用の効果音、仮の音、予算の限られた曲 | 規約(商用・改変・クレジット・再配布・AI の学習) |
| 生成AI | 曲の試作、数の多い場面の曲 | サービスの規約とプラン、既存の曲に似ていないか、Steam の開示 |
| 自作(録音・数値の合成) | 素朴な効果音、仮の音 | 録音した素材の権利 |
作曲家に発注する
発注書には、少なくとも次の項目を書きます。決めずに始めると、納品後に「ループしない」「サウンドトラックとして売れない」といった食い違いが起きます。
- 用途:どの場面で、どれくらいの時間流れるか。ゲーム画面の動画を添える
- 雰囲気:言葉で2〜3語と、避けたい方向(例:「にぎやか・木の楽器・ただし子どもっぽくしない」)
- 音楽の条件:テンポ・拍子・楽器・長さ・ループの有無(イントロの有無、ループ開始点の知らせ方)
- 参考:「この曲のように」で済ませず、テンポや楽器の編成など、何を参考にするかを分けて伝える
- 納品形式:原本の形式(例:WAV・48kHz・24bit)、ゲーム用の形式、ステム(楽器ごとに分けた書き出し)の有無
- 進め方と費用:デモの確認と修正の回数、締め切り、金額と支払日
- 権利:著作権の譲渡か利用の許諾か。予告編・配信・サウンドトラック販売での利用、クレジット、作曲家が実績として公開してよい時期
- 生成AIの使用:使ってよいか。使うならどこに使ったか(Steam の開示に関わる)
日本の著作権法では、著作権を譲り受ける契約でも、編曲などで作り変える権利(第27条)と作り変えたものを利用する権利(第28条)は、契約で特に書かないと作曲家に残ると推定されます(第61条第2項)。アレンジ版を作るなら明記します。ゲームを売る事業として従業員のいない個人に発注するなら、2024年11月施行のフリーランス・事業者間取引適正化等法により、仕事の内容・報酬の額・支払期日などを書面やメールで明示します(第3条。公正取引委員会)。既存の曲や JASRAC などの管理団体に預けられた曲は、ゲームでの利用に手続きが要ることがあります(JASRAC「ゲームの製作」)。いずれも法的な助言ではないので、最終確認は公式の資料や専門家で行ってください。
購入素材を使う
素材サイトや素材集は、規約がサイトごと・素材ごとに違います。商用利用・改変(ループ用の切り貼りなど)・クレジットの要否・再配布(ゲームのファイルから取り出せる形で配ってよいか)・予告編や配信での利用・AI の学習への利用の禁止などを確かめ、規約のページを確認日とともに保存します。購入した曲が動画サイトの自動照合(YouTube の Content ID)に登録されていると、ゲームの実況動画に申し立てが付くことがあるので(Content ID の仕組み)、配信を歓迎する作品ならこの点も確かめます。
生成AIで作る
音楽の生成AIは、プランと作った時期で使える範囲が変わります(2026年10月時点)。
| サービス | 主な条件 |
|---|---|
| Suno | 2026年9月3日発効の規約で、無料プランの曲は個人的・非商用のみ。商用に使えるのは、有料プラン(Pro・Premier)のダウンロード枠(Pro は月20、Premier は月60)で正式にダウンロードした曲だけで、著作権の発生は保証しない。無料で作った曲は後から有料にしても商用に使えないと報じられている(Terms of Service) |
| Mureka | 公式 FAQ では、サブスクリプションの料金に商用利用の権利が含まれ、ダウンロードはサブスクリプション限定(FAQ) |
| Udio | 2025年10月に大手レコード会社と和解・提携した直後に、曲のダウンロードを止めたと報じられている |
規約で「利用者のもの」とされていても、著作権が発生するかは別の問題で、文化庁の考え方では人が創作的に関わったかで判断されます(詳しくは「ゲーム開発の権利と規約」)。また、プレイヤーが触れる音を生成AIで作ったら、Steam の Content Survey(内容の申告)で開示します(2026年10月時点の公式ドキュメント「Content Survey」)。
自作する
効果音は、録音や数値の合成でも作れます。sfxr は、2007年12月の第10回 Ludum Dare(48時間のゲーム制作大会)に合わせて作られた、シンプルな効果音を作って WAV で書き出すツールです(sfxr)。



素材サイトの曲を、規約を読まずに使うのは絶対ダメだよ! 「商用OK」でも、クレジット必須とか再配布禁止とか、条件が付いてることがあるんだぁ。
判断の基準と完了の条件
ひとことで:サウンドリストの全行が本番の音になり、ループ・音量・同時発音・設定画面・権利の確認が済んだら完了です。
判断の基準は、音だけ聞いても何が起きたかわかる、長く聞く曲を実際に遊ぶ時間ぶん聞いても疲れない、通しで遊んで音量の段差がない、一番重なる場面でも大事な音が埋もれない、の4つです。完了の条件は、リストの全行が「確認済み」で、つなぎ目にすき間や雑音がなく、設定画面の各スライダーが効き、全ファイルの入手元・規約・確認日と Steam の開示の内容が決まっていることです。
AIゲーム開発での音づくり
ひとことで:AI は音を聴けないので、数値で確かめられる作業と発注書の下書きを任せ、良し悪しは人が耳で決めます。
数値は AI、耳は人
AI エージェント(Claude Code や Codex など)は、スクリプトで音のファイルを調べられますが、聴いて「良い」「場面に合う」を判断することはできません。数値にできる作業を AI に、聴いて決める作業を人に分けます。
| AI に任せやすいこと | 人が決めること・確かめること |
|---|---|
| GDD と画面の一覧からサウンドリストの下書きを作り、素材のない音を洗い出す | どの場面に、どんな気分の曲を当てるか |
| 曲ごとの発注書や生成プロンプトの下書き | 作品に合うか・聞き飽きないか・既存の曲に似ていないか |
| 全ファイルのラウドネス・ピーク・無音を測り、補正値の表を作る | 補正の後に通しで遊び、段差がないか |
| 曲の切り替え条件を自動のプレイで試し、割合を測る | どの割合が気持ちよいか |
| 全音声ファイルのタグ(ループ位置・生成サービスが付けた情報)の一覧づくり | 規約に沿って扱えているか(サービスが付けた情報は消さない・変えない) |
AI を使うと、曲や効果音の案は短い時間で大量に作れます。そのぶん工程の重心は「作る」から「聴いて選ぶ・捨てる」と「権利を確かめる」へ移るので、1曲あたり何案まで聴くかを先に決めておきます。筆者が効果音をコードで作れるかを試したときも、数値計算で3案を作りましたが、Claude は音を聴けないので、音は数値で検証しました。
生成AIへの発注書(プロンプト)の書き方
筆者の作品では、BGM を筆者が音楽生成サービスで作り、プロンプト(生成AIへの指示文)は Claude Code が書いています。考え方は3つです。
- 参考曲は数値と言葉に置き換える:テンポ・調・拍子・楽器の編成と割合(例:打楽器は控えめ)・構成(イントロの長さ、盛り上がりの有無)を読み取って書く
- 作曲者名・曲名・作品名を入れない:特定の曲に寄せる指示は、似ていること(類似性)と、その曲に基づいたこと(依拠性)の両方の疑いを招きます。できた曲が既存の曲に似ていないかは人が聴いて確かめます
- 参考音源を読み込ませない:他人の曲をアップロードして作り変えると、元の表現を引き継ぐおそれがあります。Suno の規約も、アップロードしてよいのは自分が権利を持つものだけとしています
架空のパズルゲームの通常面なら、次のような形です。
calm puzzle game background music, 92 BPM, F major, 4/4,
soft marimba lead, light shaker, warm pad, sparse bass,
no vocals, no big climax, steady energy, seamless loop
計測で決めた数字と、書き出しの落とし穴
筆者が開発中の将棋ゲームでは、BGM の音量を実測すると −10.8〜−15.2 LUFS とばらばらだったので、約 −14 LUFS にそろえました。緊迫した場面の曲への切り替えも、計測で決めています。「最初の王手で切り替える」案は、測ると1局の7〜9割が緊迫した曲になるので採用せず、玉の周りの危険度で切り替える形にしました。
- 一部だけ直したい曲:生成し直すと良い部分まで変わるので、筆者は同じ曲の良い小節を小節単位で差し替えました
- 生成サービスが付けた情報は消さない:生成サービスから受け取った音声ファイルには、曲の ID などの情報がタグ(メタデータ)や透かしとして入っていることがあります。Suno の2026年9月3日発効の規約は、Suno が付けた指紋・透かし・メタデータを、出所やプランを隠したり偽ったりする目的で消したり変えたりすることを禁じています(Terms of Service)。形式の変換や一括の書き出しでタグがまとめて落ちる設定になっていないかも確かめます。曲の ID から公開ページや生成に使った指示文がたどれるサービスもあるので、公開範囲を設定できるなら、その設定も確かめておきます。AI で作ったことは、ストアの開示欄で明らかにします
- ループ位置のタグ:
LOOPSTARTのようなループ位置のタグは、変換の設定によってはまとめて失われます。書き出した後に、ループが効いているかを確かめます
測定と検査は、まとめて AI に頼めます(依頼文の組み立て方は「Claude Code プロンプト設計」「Codexプロンプト設計」)。
Goal: assets/audio/bgm/ の全曲のラウドネスを測り、約 -14 LUFS にそろえる音量の補正値の表を作る
Context: 測定は ffmpeg の ebur128 フィルター。音源は書き換えず、再生側の音量で補正する。
全音声ファイルのタグも一覧にする(タグは消さない・変えない)
Done when: docs/audio_check.md に曲名・実測値・補正値・ピーク・タグの有無の表があり、
補正後の値がすべて -14 ±1 LUFS に入ることを計算で確かめてある



ぁぅ……生成サービスが付けたタグは、消しちゃいけないこともあるんだぁ。使う前に、規約を確かめてねぇ。
よくある失敗と対処
ひとことで:多くは「表を作らずに足した」「基準を決めずにそろえた」「規約を記録していない」のどれかです。
| 失敗 | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 発売の直前に音が足りないと気づく | 思いついた順に音を入れた | リストを作り、仮の音で全行を埋めてから差し替える |
| 曲によって音量がばらばら | 素材ごとに大きさの基準が違う | ラウドネスを測って目標にそろえる |
| つなぎ目で「プツッ」と鳴る・すき間が出る | ループ点の位置、MP3 の無音 | ループ点を拍の頭とゼロ付近に合わせ、Ogg Vorbis などで扱う |
| 効果音が割れる・大事な音が埋もれる | 同時に鳴る数の上限と優先度がない | 上限と優先度を決め、Master のピークを確かめる |
| Web 版で音が出ない | 実行中に音のバスを足した | バスは最初から用意する(筆者のブラウザ版で発生) |
| 素材の条件違反を後から指摘される | 規約を記録していない | 入手時に規約を確かめ、確認日とともに保存する |
チェックリスト
ひとことで:音を入れ終えたら、次の項目を確かめます。
- [ ] 画面の流れと操作からサウンドリストを作り、全行の差し替えの状態を管理している
- [ ] 原本とゲーム用の形式、ラウドネスの目標を決め、全曲を測った
- [ ] ループする曲を何周か聴き、つなぎ目にすき間や雑音がない
- [ ] 同じ効果音の同時に鳴る数の上限と、音の優先度を決めた
- [ ] BGM・効果音・声のバスを分け、設定画面のスライダーがそれぞれ効く
- [ ] 発注・購入・生成の素材ごとに、規約・契約・確認日を記録した
- [ ] 生成サービスが付けたタグや透かしを消していない。ループ位置のタグも残っている
- [ ] 生成AIで作った音について、Steam での開示の内容を決めた
次に読む記事
ひとことで:音づくりとつながりの深い工程の記事です。
- ゲームアセット制作の流れ:アセットリスト・発注書・検収の基本
- ゲーム開発の権利と規約:素材のライセンス・生成AIの規約・Steam の開示
- ゲームバランス調整の進め方:数値で測って直す考え方
- ゲーム開発の全工程マップ:音づくりが全体のどこにあるか



ふぁ……リストを作って、ループと音量をそろえて、権利を記録する。音づくりはこれでひと通り……かなぁ。まずは仮の音で、リストの全部の行を埋めるところから始めてみてねぇ。









