UVとテクセル密度の設計|チームで品質を揃える数値基準

UV展開はできるけれど、シーム(UVを切り開く境界線)位置やテクセル密度(モデル表面1mあたりに何ピクセル割り当てるかの指標)を「なんとなく」で決めていませんか? チーム制作で品質を揃えるには、UV まわりの判断を 数値とルール に落とし込むのが近道です。
用語のおさらい:「UV」は3Dモデルの表面に貼るテクスチャ画像の座標、「テクセル(Texel)」はテクスチャ上の1ピクセルのこと(Texture + Pixel から命名)です。「DCC」は Maya / Houdini / Blender などの3Dコンテンツ制作ソフトを指す業界用語、「VRAM」はグラフィックボード上のメモリで、テクスチャ画像はここに展開されてゲームが描画されます。
本記事では、UV の基本から、シーム配置の3原則、テクセル密度の決め方、そして UDIM とトリムシートの使い分けまで、現場で「次のアセットどうする?」と聞かれたときに即答できる粒度で整理します。
夕宮たいだふぁ……みんな〜、UV って苦手な人、多いよねぇ。「センス」で逃げがちだけどぁ、ちゃんと数字とルールで決められるんだよぉ。一緒にいこ〜。
1. UVって何だっけ
ひとことで:3Dモデルの表面を平面に開いて、テクスチャと対応づけるための座標です。
UV座標は (0, 0) から (1, 1) までの正規化された平面です。3Dモデルの各頂点に「UVではどの位置か」を割り当て、UV平面上に貼られたテクスチャを3D表面に投影する仕組みです。
なぜ展開が必要か
テクスチャは2D画像です。一方、3Dモデルの表面は曲がったり折れたりした面の集合体です。3D表面を「平面に切り開いて」ピクセルと対応させる作業が、UV展開(UV Unwrap)です。
イメージとしては、地球儀(球体)を世界地図(平面)に展開する作業に近いと考えてください。どこで「切るか」によって、生まれる歪み・余白・継ぎ目の位置が変わります。良いUVと悪いUVの差は、この「切り方」の選択に集約されます。
下図のように、3Dモデルの頂点とUV平面上の頂点は1対1で対応づけられています。


2. シーム配置の3原則
ひとことで:見えない・自然・誤魔化せる、の3つで判断します。
シーム(UVを切る境界線)の位置は、見栄えに直結します。3つの優先順位で決めます。
原則1:見えない位置に置く
最優先の判断軸です。プレイヤーから見えにくい場所にシームを逃がせば、多少の継ぎ目は目立ちません。
- キャラクターなら:後頭部、首裏、足裏、関節の内側、腋
- 背景なら:裏面、地面と接する辺、壁の裏側
- 立ち絵やカメラの寄せ位置で隠れる場所を最優先で確保
原則2:自然なエッジを跨ぐ
「現実でも切れ目があってもおかしくない位置」を選ぶと、視覚的に違和感が出ません。
- 服の縫い目、ジッパー、ベルトの境界
- 機械のパネル境界、ボルト周辺、装甲の継ぎ目
- 岩の段差、木の節、地形の急峻な傾斜
平らな1枚の面の真ん中で切るのは、最後の手段です。
原則3:継ぎ目を誤魔化しやすい場所
マテリアルの性質次第で、シームの目立ちやすさは大きく変わります。
- ノイズの強い素材(土、苔、布、岩肌):継ぎ目が紛れて目立たない
- 平坦で色が均一な面(金属、つるつる肌、ガラス):シームが線として浮きやすい
迷ったら「素材が荒い側に切り口を寄せる」と覚えてください。下図に良い例・悪い例の対比を示します。





なるほどねぇ、「見えない・自然・誤魔化せる」の順番ね。優先度もそのまま順序って覚えとくと、現場で迷わないよぉ。
3. テクセル密度の正体
ひとことで:1メートルあたり何ピクセルを割り当てるか、という数字です。
テクセル密度(Texel Density)は、モデル表面の解像感を「数値で」表す指標です。定義は次のとおりです。
テクセル密度 = テクスチャピクセル数 ÷ モデル実寸(メートル)
たとえば 1024×1024 px のテクスチャを 1m 四方の面に貼ると 1024 px/m、同じテクスチャを 2m 四方に貼ると 512 px/m になります。テクスチャ解像度が同じでも、対象の物理サイズが違えば密度は変わるという点がポイントです。





ほよ? 「いい感じ」じゃなくて、ちゃんと数字で揃えるんだぁ。これチームで言い争いにならなくて済むやつだねぇ。
業界の感覚値
プロジェクトや表現要件によりますが、おおむね次の範囲が使われます。
- 環境物(遠景の壁、地面など):
512〜1024 px/m - 中景〜近景の小物:
1024〜2048 px/m - キャラクターや主役アセット:
2048〜4096 px/m相当
数字そのものより、プロジェクト内で密度が揃っている ほうが圧倒的に重要です。隣り合うアセットで密度が大きく違うと、近づいたとき片方だけボヤけて見え、品質のばらつきとして目立ちます。たとえば同じ机の上に置かれたコップと本で密度が倍違えば、プレイヤーは無意識に「片方が安っぽい」と感じます。逆に密度さえ揃っていれば、解像度自体は控えめでも統一感のある画面になります。
4. プロジェクト基準値の決め方
ひとことで:プロジェクト開始時に一発で決めて、ドキュメントに残します。
基準値の決定手順は次のとおりです。
1. 「主役カメラ距離」を決める:プレイヤーから対象がどれくらい離れて表示されるか 2. その距離での画面占有率から、必要解像度を逆算 3. カテゴリ別(環境物・キャラ・小物など)に基準を切る 4. ドキュメントに数値で残す(例:「環境物 1024 px/m、キャラ 2048 px/m」)
数値さえ決まれば、新規アセットを作る際に毎回判断しなくて済みますし、外部協力会社に発注する際の指示も明確になります。
パディングを忘れない
UV島の境界には、最低 2px、推奨 8〜16px のパディング(余白)を取ります。
理由は mipmap(ミップマップ)です。テクスチャは縮小されたバージョン(1/2、1/4、1/8……と段階的に小さくしたもの)が自動生成され、カメラからの距離によって切り替えられます。縮小処理で境界外の色が滲み込んでくるため、パディングがないとシームが「線」として浮きます。遠景にしてからシームが見える、というのはほぼパディング不足が原因です。
UV領域を効率使用する
(0, 0)〜(1, 1) の正方形は限られたスペースなので、なるべく無駄なく使います。
- 対称利用:左右対称キャラの右半身と左半身でUVを重ねる(同じテクスチャを共有)
- 回転・反転:UV島を回転させて隙間に詰める
- タイル化:床・壁・天井などの繰り返し素材は、UVを小さく取って何度も繰り返す



ぁぅ……基準、最初に決めとかないと、後で全部やり直しになっちゃうんだぁ……ほんと、気をつけてねぇ。
5. UDIM とトリムシートの使い分け
ひとことで:キャラには UDIM、量産環境物にはトリムシート、が定石です。
UV領域を1タイルに収めきれない・収めると画質が足りない場面で、2つの選択肢が出てきます。方向性が真逆なので、混同に注意してください。
UDIM:複数のUV空間を使う
1モデルに対して、複数の (0,0)〜(1,1) タイルを連続して割り当てる仕組みです。1001、1002、1003……のようにタイル番号で管理します。
- メリット:1タイルあたりの解像度を維持しつつ、巨大1枚テクスチャの弊害(VRAM=グラフィックボードのメモリ容量を圧迫してゲームが重くなる、編集中のソフト動作も遅くなる)を回避
- 向く対象:主役キャラ、ヒーローアセット、映画的クオリティが必要な物
- 注意:使えるエンジンが限られます。Unreal Engine は 5.0 以降で公式対応、Unity は限定的サポート
トリムシート:1枚を使い回す
パーツの「縁」「フチ」「装飾帯」「パネル」だけを1枚のシート状テクスチャに集めておき、複数の3Dパーツでそれを使い回す手法です。
- メリット:背景物の量産でドローコール(CPUからGPUへ「これを描いて」と指示する1回分の命令。多すぎるとフレームレートが落ちる)とテクスチャ枚数を抑えられる
- 向く対象:SciFi の壁・機械・配管、城・家具・建材など、繰り返し要素の多い環境物
- 注意:パーツ側のUVを「シート上のどこに合わせるか」を意識して切る必要がある
UDIM とトリムシートは方向性が逆なので、同じプロジェクト内でも対象によって混在させて構いません。「主役キャラはUDIM、量産する街並みはトリムシート」のような切り分けが現実的な落としどころです。
下図に2つの戦略の違いを並べて示します。





うぐぅ……UDIM とトリムシート、似たような話に見えるけど、まったく逆方向の戦略なんだぁ。むずかしいねぇ。
密度を揃える支援ツール
主要DCCには、テクセル密度を計測・調整するツールが用意されています。
- Maya:UV Toolkit から「Texel Density」を計測・設定可能
- Houdini:UV Layout SOP で自動配置、密度は手動調整
- 3DS Max:UVW Unwrap モディファイアでチェッカー表示
- Substance Painter:チェッカーマップを貼って目視確認
6. ハンズオン演習
ひとことで:チェッカーマップ1枚で、密度のばらつきが一目でわかります。
手順は次のとおりです。
1. 任意の3Dモデルを用意(複数のUV島がある物が望ましい) 2. 等間隔の市松模様(チェッカー)テクスチャを BaseColor に貼る 3. 3Dビューでぐるっと回して観察 4. 「マスが大きい島」=「テクセル密度が低い」、「マスが小さい島」=「密度が高い」 5. 密度を揃えたい島を選び、UV Editor のスケールツールで調整
主要な DCC にはチェッカー表示のショートカットが用意されています。1分でセットアップできるので、UV作業の最後に必ず通す習慣にすると、密度ばらつきの大半は自分で潰せます。
7. チェックリスト
ひとことで:UV作業を終える前のセルフチェック項目です。
- [ ] UV島がすべて
(0, 0)〜(1, 1)の正方形内に収まっている - [ ] シームはなるべく見えない位置・自然なエッジに配置されている
- [ ] テクセル密度が用途別の基準値とおおむね一致している
- [ ] パディングを最低 2px 以上確保している
- [ ] UV島が重なっていない(対称利用の意図的な重なりを除く)
- [ ] チェッカーマップで目視確認した
- [ ] UDIM またはトリムシートを使う場合、運用ルールがチームで合意されている
8. よくある間違い・トラブルシュート
ひとことで:密度バラバラ・パディング不足・シーム位置・UVはみ出し、が定番の4つです。
密度がバラバラ
複数アセットで密度が違うと、近づいたとき一部だけ粗く見えます。プロジェクトの基準値に合わせ、UV Toolkit などで数値を見ながら揃え直します。
パディング不足でシームが線になる
mipmap 縮小時に境界外の色が滲んで「線」として見えます。最低 2px、推奨 8〜16px を取ります。
シルエット位置にシームを置いた
カメラから見たときの輪郭線にシームがあると、ノーマルマップの段差や陰影の不連続が「線」として浮きます。シルエットは避け、面の内側に逃がします。
UV領域からはみ出している
意図せず (0,0)〜(1,1) の外にUV島がはみ出すと、テクスチャが想定外にラップして繰り返されます。UDIM 運用時を除き、必ず1タイル内に収めます。



ふぁ……これでUVまわり、チームで揃える土台ができたかなぁ。次はノーマルマップとタンジェント空間に進むよぉ。
9. 次に読む記事
ひとことで:UV の知識を、テクスチャ制作とエンジン側の話に繋げていきましょう。
- CR-04 ノーマルマップとタンジェント空間:UV の上で「面の向きの細かい変化」を表現する仕組み
- CR-05 チャンネルパッキング戦略:1テクスチャに複数情報を詰める手法
- CR-06 ベイク全体論:UV の上にハイポリの情報を焼き込む工程の全体像
- MY-B11 UV展開入門(Maya):Maya 視点での実機操作(公開準備中)
- MY-B12 UV:テクセル密度の基礎(Maya視点):本記事の Maya 実装編(公開準備中)
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